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苦色の章5
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「眼が何だって?」
「…あんたの眼だよ。虹彩が七色に光って…変わってる。体も光ってる…」
「……。」
「……殺さないと」
「……!ふざけるな。」
「……さっきまで、そう思ってた。」
四十九院は母親に悪戯を見つかってたしなめられた子供みたいな顔をした。怒ろうとしてるのに、つい許してしまいそうになる笑顔だ。
雨宮は訳がわからず、次に四十九院が何を語るか見守る。
「ここに、誰かを入れたのは初めてだ。ここは避難場所。今の所、占領者は入ってこれない。今は蟻が…占領者。」
「蟻……蟻は一体何なんだ?占領者って何だ?」
「…俺の頭を喰うんだ…俺の意思とは関係なく。俺の中に入って来れたんだから、あんたも占領者かと思ったけど、こんなに綺麗なんだから大丈夫だと思って上げた。蟻はそのうちこの崖を登って俺を完全に食べるだろうけどね。ほら、もうマズイ」
青い空と白い大地。
四十九院は天を仰いだ。
四十九院の世界がゆらぐ。
暗雲が垂れ込め、雷光が大地を明滅させる。
蟻は崖を登り始めた。
崩壊。
蟻の大群が押し寄せ黒一色に変化して行く。
いまや、ここは蟻塚のようだ。
雨宮の足元にも黒い海が広がり押し寄せた。けれど雨宮の周りだけ水に弾かれた油のように蟻が迂回してゆく。真っ直ぐに四十九院明希の元へ。
蟻はとうとう四十九院を捕まえた。
足から頭に向い黒くなってゆく。
蟻が首まで来た時、四十九院が雨宮をみて微笑んだ。
「さよなら。虹の眼。」
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