アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
苦色の章8
-
「…ンッ?!……はッ!!」
キスしてる。
男と。
掴まれた手首から、強引に奪われた唇、肌に触れると相手の情報がまた入ってきてしまうと静止したかった。只でさえ疲労しているのに予想出来ない展開に頭がパニックになった。
短いフラッシュが何度か閃いて、エレベーターが止まる時の様な浮遊感を覚えると再び四十九院の世界にいる。
凄まじい嵐の中、崖の上で組み敷かれている。
体制はそのままだったが、先程とは違い四十九院明希の身体が白く発光し、彼の力が蟻を押し返しているのが分かった。美しい池の中の島を中心に緑がじわじわ広がって行く。
また浮遊感。
辛くて目をきつく閉じる。蝉の声。背面が痛む。
連続で魂が揺さぶられて吐き気がする。
それよりも。
「……やめッ……やめろ!!」
雨宮は無茶苦茶に暴れた。
キスは漸く中断され、ウチュッという大きめのリップ音を伴い唇と舌が離れた。
雨宮のこの能力のせいで、女性はおろか友人さえも作れなかったのに、何が悲しくて男とキスする羽目になったのか。四十九院が手首を離し、やっと、手が自由になった。
すぐに上体を起こして睨みつける。
クラクラする頭で無理矢理呼吸を整えて、卑劣な動物殺しの犯人を殴ってやろうと身を捩ると、
「…ありがとう、虹の眼。今日は蟻を追い払えた。」
無垢な顔でそんな事を言う。
出会った時は、硝子玉みたいな目をしてたのに、今はまるで子供みたいだ。
せめて、何か言ってやろうと歯を噛み締めたが出てこない。
雨宮は渋い顔をしながら、取り敢えず用無しになった振り上げた拳の甲で唇を拭いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
59 / 159