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苦色の章10
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電話での相談料金は一時間三千円。
嫌になったら患者のタイミングで切って良い。
本当の私……ねぇ…
早川カイリはカレンダーをクリックし必要な処理を済ませた。名前は匿名でもいいようなので《アリス》にした。
悩みや胸の内を告白し、単なる相談にのるだけでも良いとあったが、早川カイリは単純に女医がどんな人物か興味を持ったのだ。
だが、対面して自分の姿を見られるのは好ましく無かったので、声を聞こうと思った。
そして、ついでにどの程度の人間なのかを見ようと思ったのだ。
アリスにとって、これは娯楽だ。
この思い付きの娯楽の対価は三千円だが、お金が惜しいとは思わなかった。予約は朝から深夜までまばらにあったが、明日は休みだから1日時間が空いている。三時くらいがいいだろうと予約して眠りについた。
次の日。
アリスが3時ぴったりに電話すると、2コールで向こうが出た。
「【ヤヌスの部屋】へようこそ。」
夜の湖、深い水底のような落ち着いて静かな澄んだ神秘的な声。アリスは惹きこまれた。
これが、女医の声…。
姿を見ていなくても生まれながら品格の備わった上流階級の人間だと思った。
電話する前はもっとお喋りでおせっかいな人間臭いキャラクターを想像していたから、残念な思いをしてホラね、とやりたかったアリスとしては肩すかしだ。
「貴女の話を聞かせてアリス。」
声が心に響く。
生まれながらに人の上に立つ、そんな人間に初めて出会った気がする。そんなつもりは無かったのにアリスは話し始める。
「私の話……ね。私は可愛いものや綺麗な物が好き。だって、見ているだけで幸せになれる。そういう物を集めてるわ。物だけじゃなく生き物も。」
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