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苦色の章11
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「可愛いものや綺麗な物を集めるのが好きなのね。それは女性の特権。…基本的には、ね。アリス、貴女はどんな物が好きなのかしら?」
心地よいトーン、それに話す速度の妙。
特別な事などして無いのに、それだけで何故か受け入れられていると感じる。聞いて貰える喜び。
不思議な安心感。
「うーん、昔はリボンを集めていたの。その次はアンティークのブローチにはまった。アンティークの良さとか初めはわからなかったけど、セルロイドのヴィンテージのブローチ。凄く可愛いの。セルロイドは象牙の代用品として人類の歴史上初めて作られたの合成樹脂なんだけど、劣化し易いし、とても燃えやすい物質なの。だから、工場なんかで火災が絶えなかった。現存している物は凄く貴重なの。 」
「とても詳しいのね。聞いているだけで貴女のブローチに対する愛着が伝わって来る。素晴らしいコレクションがありそうだわ。芸術や技術というものは解る人にだけその価値がわかるもの。貴重なものは自分を大切にしてくれる人の元に集まるの。貴女とセルロイドは出逢う運命だったのかもしれないわね。」
「そう言って貰えると…嬉しいかも。」
スルスルと自分の事を話してしまう。
ブローチの事なんて誰にも話した事は無かったのに、花や動物の物を中心に収集している事、先日フランスの鹿のモチーフのアンティークブローチを手に入れた事を話してしまった。元々、特に相談なんて無かったから、次は何を話そうと唇に指を宛てて少し考え、あの事を話そうと決めた。
「今は、物だけじゃなくて生き物にも興味を持っているの。バードウォッチングよ。可愛くて綺麗な小鳥。私の愛してる小鳥は数は多く無いから凄く貴重なの。巣を見つけて、そっと遠くから観察するの。」
小鳥の事を話した。
今はこれに夢中。
可愛くてカッコイイ男の子達。
流石に本当の事は言わない。けれど、彼女なら私がどんなに小鳥を愛しているかわかってくれる気がしたのだ。
彼らは私に愛されていると知ったらきっと満たされる。
幸福なはずだ。絶対そう。
「貴女は本当に綺麗で可愛いものが好きねアリス。」
私は満足した。
彼女が私を肯定する。
満たされる。
私は理解者をみつけた。
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