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苦色の章12
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【ヤヌスの部屋】はあれからお気に入りだ。
治療の事は一切言ってこないが、アリスにとっては都合がいい。アリスはちょっとした事を話し、向こうは話を聞いて報酬を得ているのだから問題無いのだ。
小鳥達の様子を話して聞かせるのは、いつしか習慣になっていった。
アリスは小鳥達をどんなに愛しているかを時には時間一杯話し、時には数分で満足して電話を切る事もあった。
そのどちらの場合でも満ち足りて、不満は全く無かった。
小鳥の事を知っているのは彼女だけ。
たとえ、どんな事をしたとしても彼女は絶対に患者の秘密を漏らさない。
彼女は完璧だ。
ため息をついた。
歩道橋の上で1時間程過ぎて、雛の身に普段とは違う何かが起き既に帰ったか、もしくは病欠しているのかもしれなかったと考えた。
人通りも無く、車も通りかからない。
ぽつんと一人だけ。
今日のところは帰ろう、そう思った時だった。
アリスが登ってきた階段とは反対側から誰か登って来たらしい。何気無く視線を向けると、雛ではなかったが1年前から見守っていた小鳥の1人が向こうからやって来たのだ。
彼の家もこの付近だった。
まるで、見守ってくれたお礼をするかの様に孤独を紛らわしに来てくれたと思えた。その小鳥への愛情が増した。
けれど。
背後に見知らぬ女がいた。
小鳥のパンツの後ろのポケットにふざけて手を入れて、列車の様に縦に並んで歩く。
親しげな様子は通常の友人の域を超えて、お互いしか見えていない時の男と女の出す不愉快な気を発していた。
彼らはアリスの横を通り過ぎた。
アリスはチラリと彼らを一瞥しただけ。
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