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苦色の章16
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「うん、ここに来て良かった。…虹の眼に会えたから。今は黒いけど、頭の中じゃ虹色の眼で身体が金色に輝いてた。凄く綺麗だ。もう少し虹の眼と一緒にいたいんだ。」
その言葉を聞いて、母親も雨宮も違う意味でギョッとした。
互いに、自分に付随する事象で相手に不審感を抱かせるのが嫌だったのだ。
いつか息子が治ると信じている母親は、可愛い我が子を手元に置いて置けるのは嬉しかったが、他人に大切な息子が所謂頭の弱い可哀想な子だと思われるのが嫌だった。しかも、同い年位の正常なラインの向こう側にいる綺麗な青年に、異常なラインにいる息子の現実を見られるのが嫌だった。
雨宮は自分の能力を知られるのが怖かった。
さっきから自分の事を虹の眼だの金色だの言う四十九院をなんなんだと思っていたが、それならお前だって真っ白に輝いていた、そう思ったところで気づいたのだ。
四十九院は四十九院の世界で、雨宮の能力を視覚的に捉えていたのではないかと。もしくは彼にも何か力があるのかもしれない。
ただ、現状これ以上変な事を普通の人間に話して欲しくない。無駄かもと思いつつ、雨宮は四十九院にアイコンタクトした。四十九院はじっとこちらを見た。
「明希ッ。訳のわからない話をして困らせてはダメよ。……….、御免なさいね?さ、帰りましょう?」
「……嫌だ。まだ、話をしたい。母さんは帰っていいよ。」
「明希!!」
「嫌だ。」
ガンとした様子で四十九院が河原に座り込んだ。梃子でも動かないつもりだ。まるで子供だと雨宮は心中ため息をついた。今の四十九院からは殺気も異常性も感じない。確証は無いが何故か大丈夫だと思った。
母親はというと、息子が初めて自分の意思を表し、反抗した事に少なからずショックを受けていた。
「お母さん、もう少し話をして彼の気がすむなら付き合いますよ。彼は自分で家まで帰れますか?」
「え……ええ、何時も自分で帰ってきます、…けど。ご迷惑じゃないかしら。」
「いいえ、大丈夫です。俺は隣街の大学生で雨宮といいます。卒論でこの辺の鉱物の研究をしようと思っていて、今日は石を拾いに来ただけなのでもう用も済んでますし気にしないで下さい。」
「わかりました、明希を宜しくお願いします。」
雨宮は微笑んで見せ母親を安心させる。
母親もやっと緩く微笑んで頭を垂れその場を立ち去ったが後ろ髪ひかれる思いだろう。
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