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榛の章1
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雨宮は綺麗だ。
凄く綺麗だ。
今までどんなに綺麗な花を見てもどんなに綺麗な景色を見ても、さほど感動する事はなかった。
頭は何時もスッキリしなかった。
俺の真っ白な世界には誰かしら占拠者が居た。
小さかったり大きかったり様々だった。
シミみたいに俺の一角に入り込んで俺を塗り替える。
占拠者の力が強いと俺は自分が消えて行くのを感じた。
それはとてもとても怖い。
深く考えられない頭でも怖いものは怖い。
残り少ない自分が薄れる感覚。
誰も俺の苦しみを理解しない。
だけど、雨宮が救ってくれた。
小さな池の周りだけが僅かに残った抵抗する自分だった。
でも、今は花が咲き緑が広がっている。
雨宮が俺を変えた。
雨宮がそばに居てくれたらそれで良い。
手が暖かい。
この手を離したくない。
彼は自分の瞳が虹色に輝く事を知らない。
燃え立つような金色に包まれている事も知らない。
これが何なのかわからないが、雨宮は強い。
きっと凄く強い。
蟻に飲まれた時、雨宮は蟻を灰にした。
俺の力だと思っているが、あれは雨宮の力だ。
手の平から熱いほどの力が雨宮から伝わって来た。それが俺の中で跳ね返り反響しあって放出されただけだ。
これまで、占拠者がゼロになった事なんてない。
頭が冴えてくる。
河原でも、俺の頭の中でも雨宮と手を繋いでいる。
俺の何が見たいのかわからない。でも、雨宮なら好きにしていい。
隠すものなんて何もないから。
この世界で、雨宮とこうしていたい。
いつまでも雨宮を見ていたい。
虹の眼で俺だけを見て欲しい。
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