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榛の章2
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四十九院が自分の眼の色を綺麗だという。
自分はその色を識別出来ない。
自分の死期も。
わかるのは悲しい人の不幸ばかりだ。
彼がある種の霊能者、自分と同類だと分かって少しだけ気を許した。今までは、自分独自の能力で、この世で自分だけが特異なのだと思っていた。
誰にも共感して貰えないのは孤独の極みだ。
自分のカラーを見た事がない雨宮は、記憶を辿り四十九院のいう虹色に輝く眼や金のオーラをもつ人間がいなかったか考えたが、これまでやはり見た事が無かった。
人は皆、弱い霊気を纏っており、金と見えなくもない人はいるがそれは一瞬の煌めきの様なものだ。
そして、普通は大概様々なカラーが混ざっている。精神状態や体調によっても色が変わる。
霊能者と呼べる人間は纏う霊気が強く、カラーがあまり変わらない。
自分の感覚で言えば、霊気の出力が一定で安定している、といったところだろうか。安定しているとカラーがあまり変わらない。
その点から言えば、四十九院は霊能者と言える。
真っ白な霊気を常に纏っている。
現実世界では普通の人間に見えるがここでは違う。
今、直に触れ感じている。
彼は本物だ。
もっと深く潜る。
四十九院の霊気の質を探って行く。
四十九院が瞼を閉じた。
彼の霊気を辿りその根源たる魂にそっと触れると、少しだけ自分の気を放った。
すると、彼の魂が金色に輝いた。そして、彼の心の世界全体に光が広がって行った。眩く、力強く、燃え立つ金色。
雨宮は驚いてその光景を見守った。
「……?」
「これは雨宮の色だよ。綺麗だ。線香花火が弾けるみたいに。」
「これがあんたに見えている俺の色か。……初めて見たよ…」
雨宮はやっと理解した。
四十九院はその白さ故に何色にでも染まる。
発する力では無い。内に力が向かう受け身の力だ。
だから現実世界では霊気を殆ど発すること無く普通の人間に見えた。
四十九院は自分で何を受け取るか選択は出来ない。
強い意思の力や霊気が近くにあれば影響をモロに受ける。
抵抗は出来る様だがそれは脆く危うく、完全に占拠されれば多分占拠者が二人出来上がる事になる。
完全なるコピーの完成だ。
そしてもう一つ。四十九院は受けた力を倍化する。
それ自体では効果はないが、何かが加わった瞬間激しい化学反応を起こすような触媒の力だ。
僅かに気を放っただけで四十九院の世界に自分の金色の霊気が拡がったように。
とにかく、四十九院は犯人では無い。
蟻に自分を投影した犯人は別に居る。
雨宮の次の目的が定まる。
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