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榛の章3
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「……四十九院、これで少しはあんたの事は理解したつもりだ。」
「雨宮がそう言うなら、そうなんだね。」
「あんたはアンテナの様な力を持っている。それも感度が良いから色んな電波を拾ってしまう。例えば今回の動物殺しの犯人の思念。今まで占拠者が複数になった事が無いと言ってたな。もしかしたら、占拠者の候補者が複数いた場合、その中のより強い者があんたに影響を与えているのかもしれない。」
「…確かにそうかもね。…蟻は今までの占拠者の中で一番強かったな。でも、蟻より雨宮の方がずっと強いけどね。」
「………、あの時蟻を追い払ったのは間違いなくあんたの力だ。俺の霊気を増幅して放ったんだ。触媒って言えばいいかな…そういう力だと思う。」
「ふーん。ねぇ雨宮、アキ、俺は明希だよ。明希って呼んでよ、あんたじゃなくて。」
触媒の話は聞いてか聞かずか、ともかくにこりと笑みを浮かべて四十九院は言った。
人懐こい笑顔だ。
雨宮は黙って一つ頷き、相手を見た。
四十九院は現実世界よりも彼の精神世界での方が流暢に話し、表情も豊かだ。もしかしたらこの触媒の能力のせいで、現実世界に何らかの影響が出ていて実生活が阻害されているのではと感じた。彼の置かれている状態を一番近いイメージで言えば自閉症あたりだろうか。
心配なのは、四十九院が自分で恐れている通り再度蟻がやって来る可能性についてだった。
犯人は動物を殺せるのだから肉体を持っている筈だ。
霊に取り憑かれている人間という可能性も無くは無いが、それならば面倒臭いことをせずに四十九院その人に取り憑こうとする筈。四十九院の存在に気付かないなら、やはり人間だ。その人間の垂れ流しの波長を四十九院がキャッチしてしまうのだ。
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