アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
榛の章4
-
「…明希、ニュースは見てるか?動物虐待……つまりあんたの頭を占拠しようとした蟻の正体の。相手は兎を6匹、猫を5匹まで殺してる。俺が霊界から受けた啓示では次は犬を殺す事になっている。」
「見たかもしれないけど、あまり覚えてない。雨宮に会うまでずっと頭がボヤけてたから。」
「蟻は明希の近所に住んでいるのかもしれない。あんたが心配してる通り、また影響を受けないとは断言出来ない。」
「せっかく自由になれたのに、また蟻が来るなんて嫌だ。雨宮、お願いだから俺のそばにいてよ。蟻になんかなりたくない。」
四十九院は雨宮の上着の裾を強く掴んで懇願したが、無情にも首を横に振られた。
雨宮は諭すように言葉を紡ぐ。
それぞれの生活があるからだ。
「…それは不可能だ。1日や2日一緒にいれたとしても、その間に犯人が捕まるなんて都合のいい事は起こらない。それに、明希の能力の事を誰も知らないわけだから、あんたをまともな人間とは誰も思わないだろ。一律、あんたは心を病んで静養しているっていう認識だ。母親がつきっきりだった訳だし。」
「じゃあどうすればいい…?」
「あんたの記憶が流れて来たが、蟻も急激に蝕んでいった訳じゃないだろ?明希を染め上げるのに結構時間が掛かっている。だから、犯人が捕まるまで…そうだな、一週間に一度位のペースで会えばいい。俺があんたの頭の中を調べるか…」
「嫌だ!1週間なんて長いよ!3日にしてよ!!」
四十九院は雨宮の言葉を最後まで聞かずに悲痛な叫びとともに時短を迫った。顔が近い。先刻のキスが頭を掠めて動揺したのと、その切羽詰まった様子に気圧されてつい頷いてしまい、四十九院が喜ぶ姿を見ながら雨宮はしまったと舌打ちした。
どうもペースが乱されてしまう。
今からそれは無しだと言う訳にもゆかず、ため息を一つして諦める事にした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
73 / 159