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榛の章6
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この手のニュースを騒がすような犯人、所謂サイコパスに雨宮は実際あった事がない。良心が著しく欠けた彼等の精神世界など想像もつかないし、彼等にふれてしまったらと考えただけで気分が悪い。四十九院の心の中で見た無数の蟻。知らない間に家の僅かな隙間から入り込み、見付けた時は数匹だったものが次の日には100を超える数で床を歩き回る。現実では蟻の駆除剤をおけば良いが、そんな風にして、いつの間にか心を侵食する他人の精神や思念をどう排除すればいいのか。
なにより自分を蟻に表現する犯人の心は不気味だ。
物言わぬ虫、目的を遂げる為に無心に働く様、そしてその圧倒的な数。
人である筈の犯人の心の所在は一体何処にあるのか。
……もしくは、四十九院から見て蟻に見えたのかもしれない。
その場合、無意識に犯人の内面、もしかしたら記憶の一部などを眺め象徴的な姿を描き出した事になる。
もし後者であれば、犯人へ繋がるヒントになるかもしれない。雨宮の思考は事件に取り憑かれたまま、条件反射でたいして脳を使わずにカップ麺の蓋を開けて火薬を麺に振り入れ湯を注ぐ。箸を乗せて蓋がめくり上がらないようにするところまで淀みなく動きながら、そのまま犯人の事を考え続ける。
大体、犯人が動物を6匹殺すのは何故なんだろう。
四十九院の心の中で聴いたノイズを思い返す。
《ウウウウゥレシイイイィ………もっと……もっと強く……集めなイと……》
ブブブブフぶぶふブブブブフぶぶぶ…ゥ……ギニュッ
オオおお……グシャッ……ドンッ!
《蟻、蟻の大群が》
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
《トリ戻さナイト……集めル……6ツ………》
嬉しい?
もっと強く?
もっと集める?
取り戻す?
6つ集める?
所々、音や四十九院の意識も混じっているが、内容的に関係なさそうなところを省くと、このあたりが犯人の思念かもしれない。
犯人にしか理解できない目的の為に6つ集めるのは勿論動物の事だろうし、それによって強くなったり(強くなったと犯人が思い込んでいたり)、嬉しかったり、もっと集めたいと思うのは理解出来る。ただ、一つだけ他と意味が違うと思われる単語が浮かぶ。
取り戻す?
一体何を?
失われた権力だろうか?
失われた年月だろうか?
失われた身体だろうか?
失われた金たろうか?
失われた恋人だろうか?
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