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榛の章9
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「母さん、スマホが欲しい。」
息子が突然そんな事を言い出した。
雨宮という美しい青年と会った直後から息子が変わった。
不安になった。
私が明希を護ってきた数十年を彼に一瞬で奪われたよう。
「……貴女の血のせいね加奈子さん。」
息子の異常は全て私の所為だと義母は会うたびに囁いた。
夫はダンマリを決め込む。この家では、誰も私を守ってくれなかった。
でも私は決めた。
明希。
明希。
可愛い明希。
貴方が私に微笑んだ日を忘れない。
世界がその瞬間微笑んだの。
1人じゃない。
私には貴方がいる。
何を言われても私が護ってあげる。
大切な大切な私の息子。
いつでもそばにいるわ。
貴方と私、二人だけよ。
明希は繊細なだけ。
感受性が人より強いのよ。
みんな何故わかってくれないの?
異常なんかじゃない。
それなのに。
明希は帰るなり私に抱きついてきた。
嬉しかった。
ただいま、母さん。
こんな言葉を聞けるなんて。
感情の抜けたいつもの明希じゃない。
表情が全く違う。明るい笑顔。
ああ、私の明希。
私の願いが神様に通じた、そう思った。
けれどそのうち分かった。
明希が口にするのは雨宮という青年の事ばかり。
彼と会いたい。
彼と話したい。
彼が持っていたスマホが欲しい。
雨宮とかいう大学生。
神秘的な美しさで人を一瞬で魅了する。
私は彼に息子を奪われる為に育ててきた訳じゃ無い。
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