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榛の章13
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明希を伴って携帯電話を手に入れに駅前にやって来た。
スラリと背が高い明希は目をひいた。女子高生の一団がすれ違いざま息子を見て仲間内で湧き立ち、幾度か振り返る、そんな背後の様子を耳で感じながら微笑む。
私の自慢の息子だもの。
ずっと息子と買い物に来てみたかった。
今までは、人混みにくると調子が悪くなって、時には理解できない事をブツブツ言ったり、急に走り出してしまったりして汗だくで追いかけなければならなかったこともあった。
あんなに無表情だった息子が今は楽しげで、私の隣を歩きながら興味津々といった商店街を眺めている。
メロンが食べたいと言い出したので、帰りに買って帰ろうと約束をした。やがて、携帯会社のショップについた。
明希は中に入ると、さっと店内を見回して一直線にある機種のところに走った。
「これ。これが欲しい。」
とある機種のシルバーの見本を手に取り眺めている。
すぐに合点がいった。
雨宮という青年と同じものなんだろう。
明希は雨宮君に強く影響を受けている。
雛が初めて見た物を親と思ってしまうみたいに、今は彼が明希の一番で、彼の模倣をしているみたいだ。
「雨宮君とお揃いにするの?」
「うん。同じだと教えてもらいやすいから。それに同じだと俺が嬉しい。」
「………教えて貰うって明希、雨宮君とまた会うの?」
「雨宮のおかげで、母さんとも喋れてるし、自分で考えられる。頭の中の蟻を追い払って俺を救ってくれた。でも、また蟻が来たら怖いからそばに居て欲しいって俺が無理に頼んだんだ。雨宮は会ってくれるって言ったよ。」
「…そう。明希、蟻って…頭の中に蟻がいるとかそういう事を雨宮君に言ったの?雨宮君、驚いたんじゃない?」
「大丈夫。雨宮は物知りだからそういう事にも詳しいんだ。」
明希が約束をすっぽかされるのではないかと感じた。
雨宮君は苦笑いして、明希の言葉に適当に相槌を打ったのかもしれない。約束の日、明希が傷付きはしないかと心配になる。
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