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榛の章14
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明希は全てではないにせよ、これまで生きてきた時間の中で知識は得ている。それを上手く活用する能力は無かったが、調子が悪くても意思表示だけはできた。
私の見ている前で、ショップに置いてある無料のコンテンツの小雑誌を幾つか集めてカバンに入れた。音楽やゲームにも興味を示さなかったが今は違うらしい。契約を急かされてカウンターについた。
人のいない時間帯を狙って動く癖は染み付いていた。
明希を好奇の目で見られるのが嫌だったから。
でも、今はそんな心配が嘘のよう。
「コレとコレが欲しいんだ。白とピンクの。」
「二台?一台でいいでしょ、明希。」
「ピンクは母さんのだよ。」
びっくりした。
そして、嬉しさがじわじわ広がる。
笑顔で待つ店員に明希の望むまま契約を進めてもらい、ガラケしか持った事のない私は初めてスマートフォンを手にした。
息子とお揃いだ。
40分後二人してスマートフォンの袋を手に店を出た。
これも雨宮君の効果なのかしら。
憎みかけた事を恥じた。
良く考えてみれば、河原で会っただけの問題を抱えている見ず知らずの他人を、普通家の近くまで送り届けてくれるだろうか?
きっといい青年だったのだ。
それなのに私ときたら…。
明希は戻ってしまう事を恐れているけれど、このままって事もある。仲の良い普通の親子として過ごす時間が訪れるかもしれない。
今までと同じじゃ駄目。
明希と同じよ。
私も今までの時間を取り戻さないと。
「コレ、雨宮に教えて貰ったら母さんにもおしえるからね。」
「ありがとう明希。」
「何かあったら今度から連絡できるね。」
「そうね。」
「雨宮、友達になってくれるかな。」
「なってくれると良いわね」
「………うん。」
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