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茜色の章5
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「良かった。俺ずっと友達いなかったからさ。」
「安心していい。この調子なら友達なんていくらでも出来る。」
「友達いっぱい出来たら楽しそうだね。でも、俺は雨宮がいいんだ。」
四十九院は心底嬉しそうに言う。
素直で感情表現がストレートだから好感が持てる。
特に何もしなくてもきっと周りが放っておかないだろう。
それに、友達がいなかったのは雨宮も同じだ。
小学生の時は深く考えずに楽しく遊んでいられたからまだ友達と呼べるものもいた気がするが、思春期を迎える頃、利害が絡む嘘や自と他を優劣で分けたり順位付ける立ち位置探しが始まると、嘘と建前に嫌気がさした。それ以上に、思春期の欲望は実体験を迎える前の想像力も手伝って物凄いものだった。
「…でもさ、俺の事理解出来るのは雨宮くらいだよ。だってそうでしょ?この先、俺がこの状態をキープして生きていけるとは思わないんだ。」
「明希が生きていくには、安全な場所を作るしかない。それと、精神的な防壁を強くする訓練をするとか…かな。」
「安全な場所って…どう作るの?」
「そうだな、あんまり移動しないで拠点を作るといい。例えばこの街。蟻の正体さえ突き止めてしまえば一番強い占領者?はいなくなるだろ。間違いなく、精神鑑定を受ける状況になるからどっかの施設に収監されるはず。蟻に家族がいれば、これだけ大きなニュースになってるんだからこの街にいられない。きっと引っ越す筈だ。多分お前を支配するほど強い異常者は命を何とも思わない殺人者になり得るレベルの奴だと思うから、上位さえ潰せば今の状態をキープできるんじゃないか?」
「…俺にできるかな?でも、二人なら何とかできるかもね。雨宮、手伝ってくれるでしょ?」
四十九院の無邪気な顔を見ながら頷くと、不意に早川カイリの事が頭をかすめた。
彼女は異常者に近いレベルの妄想を持って行動していたが、蟻で無いのは確かだ。ストーカー行為は普通の恋愛が拗れても起こる可能性がある。触れられた時伝わって来たのは、相手に気取られずに写真を撮るなどして妄想を満足させる程度で、動物を殺したりしてはいない。だが、少し気が変質したのは気にかかる。
雨宮は、蟻をどうにか出来たとしたら、この街の次の占領者は早川カイリのように思えてならなかった。
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