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茜色の章11
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あんな物が未だ四十九院の心に道をつくって巣食っていると思うと気が気でならない。
犯人はただ生きているだけ。
それだけで同じ町にいる四十九院の心に無限に増殖する蟻の姿で現われて侵食してきたのだ。
意思なきところに意識が加われば、四十九院が攻撃されるかもしれない。今までと同じパターンで来るとは思えない。
四十九院を侵食する行為が、自分のコピーを作ることだと気付かれたらきっと恐ろしい事になる。
雨宮は穴を完全に消す方法を考え始めた。
今まで自分の力を全力で放出した事がない。
力は魂から放たれているものだ。何処が限界かも知らないし、自分の限界がわかる時は即ち自分が魂を使い尽くして死ぬ時かもしれないのだ。
この間はたまたま追い返す事が出来た。
四十九院に生きることを諦めないで欲しかった。
その思いが四十九院と自分の力に化学反応を起こして劇的な変化を起こしたのだ。
四十九院の触媒の力…。これがあれば穴を塞げるだろうか?
歩みを止めると四十九院もすぐに気付いて同じく足を止めこちらへ向き直った。
その顔がどうしたの?と言っている。
「…前、お前と俺とで蟻を追い払えたよな」
「うん。でも、あれは雨宮の力だよ。雨宮の力が俺の中で弾けて反響して色んな所に散った感じかな。」
「アレ、もう一度出来るか試してみないか?」
「いいよ、雨宮が望むなら。だけどさ、意識してやった訳じゃないから成功するかわからないけどね」
同意を得て互いに頷き合うと互いにゆっくりと手を差し出した。
確か蟻に覆われた四十九院の手をあの時意思を込めて掴んだ筈だ。生きろ、諦めるな。
それだけを念じて。
指先が触れ、体温を感じる。
ついで、相手の霊気のパターン。
それから……?
何も起こらない。
危機感が足りないのだろうか?
四十九院も同じ事を考えているのか小首を傾げる。
「もっとこう、ギューッてしたよね」
四十九院から力を入れてしっかりと握りしめて来た。
それでも何も起こらないと判明すると、パッと明るい顔になり、前回やったことを一つ忘れていたと距離を縮めて来た。
「これだよ、雨宮!」
一瞬の出来事だ。
腕を強く引かれて、不意な事によろめいた俺は体勢を崩して前かがみで右肩から四十九院の胸にぶつかる。
なんだよと怒りそうになった俺が見上げると、無邪気な笑顔の四十九院の顔が近付いて、まさかと思った時には遅かった。
腰をしっかりと絡め取られ、唇が重なり合う柔らかな感触。
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