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茜色の章14
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「蟻の侵入口に異変があったらすぐ教えてくれ。一旦戻ろう」
雨宮は意識を集中して四十九院の世界から現実に戻った。
覚醒すると四十九院が先に目覚めて、という言い方には語弊があるが、起きた?という感じでニコリと笑みを向けられ、先刻触れられた瞬間四十九院の精神世界に飛び、意識を失ってよろめいたらしい自分をずっと支えてくれていたようだった。
普通の人間だと雨宮に触れられても自分の心を覗かれているのは気付かない。だが四十九院は能力者で、どうやら自分の世界に雨宮を自ら呼び込めるようだ。そして能力者に対して、雨宮の意思で触れる時以外の不意打ちなどでは現実世界の雨宮は意識を失ってしまう事が分かった。
四十九院の凄いところは、自分の精神世界に居ながらにして、現実世界でも行動出来る事だ。
「……どうやって……魂は一つなのに、意識をどう共有しているんだ?」
「さあ?初めてだからわからないな」
四十九院はゴロリと河原に寝転び空を見上げた。当の本人もよくわかってないらしいが、意識は両方の世界にあると言う。精神世界で起きた事も目に見えている訳ではないが頭の中ではイメージとして浮かび理解していて、現実世界で倒れそうになった雨宮を慌てて支えた事も精神世界の四十九院は理解しているらしい。雨宮には出来ない芸当だった。
「成る程、能力にも色々あるらしいな。」
「定期点検には便利でしょ、俺。」
「かもな。」
雨宮は笑みを作った。
雨宮の相手の情報を読む力は良く考えてみれば、自分の中に小さなスペースを作ってそこに一定量だけ相手の要素を呼び込むものなのかもしれない。相手が能力者でスペックが高い場合、自分がまるっと相手の中に呼びこまれると意識は失われる、そういう事のようだ。これはある意味危険だ。
他人の精神世界で怪我をしたりすると、現実世界でも怪我をする。魂や幽体が傷つくと現実でもペナルティをうけるという事は以前から理解していた。
アストラル(精神世界)とマテリアル(物質世界)の奇妙な相互性。まだまだ雨宮の知らない事が有りそうだった。
もっとこの分野で勉強しなければならないのかもしれない。
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