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呂色の章4
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雨宮は四十九院の魂の世界で力を発し続けていた。
特に疲れたという事もなく、限界も感じない。
四十九院はどうなったのかここからではわからなかった。
出し続けているこの力がまだ足りないのか、それとも多いのか。または全く無意味なのか。
それに不安もある。
この力が雨宮の魂を由来とするものと仮定して、今のところこの力を出すのに痛みや疲れを感じていない。
…という事は、こうしているうちに突如限界が来たとしてもおかしくない。
いっそ目を開けてみるべきだろうか。
焦燥感に支配されつい迷ったが、結局四十九院の精神世界まで戻ってみるという無難な選択肢をえらんだ。
魂に触れている限り四十九院しか感じない。
此処よりは浅い階層であろう精神世界まで戻って、もし蟻がいればまずは規模を確認すればいい。
減っていたならこのペースで放てば良いし、蟻の数が変わってなかったり増えていたならこの方法は無効。
力の放射をやめて精神世界での四十九院の手の感覚を頼りに戻ろうとした。
ところが。
『………?』
気が付けば手を握っている筈の四十九院の手の温もりが無い。
魂に触れている間、そこいら中から四十九院の気を感じていた為いつの間にか手を離してしまっていたのかもしれなかった。
目を閉じている為自分が今上を向いているのか下を向いているのかさえわからない。
次第に焦りは恐怖に変わっていく。
命綱を失って真っ暗な宇宙空間に放り出された気分だ。
地球が見えていたとしても戻れず、自分の呼吸音や声以外無音の世界。雨宮は未知の世界で迷子になってしまったのと同じだった。恐怖してはいけない、こんな場所で集中が乱れてしまえば命取りだと頭ではわかる。
けれど、恐怖と孤独がじわじわ溢れてきて雨宮は冷や汗をかきながら浅い呼吸を繰り返した。
『明希……明希……、俺の声が聞こえるか?』
四十九院に呼びかける声は震えていた。
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