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呂色の章10
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そんなカズももう中学生だ。
下で「おばちゃんこんにちは!」と言う声と共にドタバタと階段を駆け上がる足音が大きくなって部屋のドアの前で止まった。そして、カチャンとノブが回ってカズが現れる。
「にぃちゃん!」
「よっ。来たな!」
仔犬キャラは変わらない。
人懐こく笑う顔が昔のままだ。
「どーよ、カズ。俺が上京してから何か変わった事あったか?彼女できたか?好きな子は?」
「いないよそんなの」
「そうか?お前、俺が思ったよりもてそうなんだけどな。ちょっと前まで鼻水垂らしてたのにデカくなったし。ちゃんと中学行っててくれて安心したよ。」
「…俺さ、今は施設にいるっていったでしょ?前住んでたとこより少し遠くなっちゃったからこの家まで少しかかるんだ。」
女の子の話には、くすぐったそうに照れて笑いながら否定したカズだが、それから少し悲しそうな顔をして我が家から離れた所にいると話した。そして、次に口を開いたカズが語ったのは壮絶な数年間だ。
「母さんと父さん死んだんだ。」
「は!?マジか??何で??」
俺は自分の耳を疑った。
まさか両親が死んで施設に入っていたとは思わなかったのだ。多分ネグレイトの親を見かねた近所の人が通報して保護されたのだと思い込んでいた。とはいえ、両親が死んで悲しくない子供はいない。俺は衝撃を受けて暫しどうしていいかわからなかった。カズの不運の連続に、退職したことくらいでへばっている自身の甘えが身に沁みてくる。
「火事でさ、あのアパート全部燃えちゃった。父さんも母さんも昼間っからお酒飲んでて爆睡してたんだ。それで逃げ遅れて。親戚との付き合いも無かったし、葬式終わってすぐに施設に入ったんだ。」
「この辺で施設って言ったら風の子学園か…あそこに仲のいい友達いたよ。職員の感じも当時は良かった印象あるけど…そうか……苦労したな、カズ。そんな大変な目に遭ってるなんて何も知らなかったよ…」
「平気だよ」
カズはニコリと笑う。
それがまたいじらしく、切なくなった。
いや、もしかしたらあの両親から離れられて良かったのかもしれない。施設ではカズが飢える事も無いだろうし、親の身勝手な都合で真夜中に部屋を出される事も無いだろう。
国に援助して貰って高校までは出してもらえる筈だ。
もし俺が援助出来るとしたらその先だろう。
それまでに俺自身がしっかりしてないと…
色々考えながら冷蔵庫からキンキンに冷えたコカコーラを出してきて二人で飲んだ。
昔は良くこうして俺の部屋で仲良く過ごしたのを思い出す。
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