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呂色の章15
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スマホを握ったままの自分の手の甲に雨宮が控えめに指先だけで触れているのだが、喫茶店の雨宮の様子が変わった。
元々色の白い雨宮だが、完全に血の気が失せていた。
雨宮の指先が冷たい。
貧血を起こしているのかもしれなかった。
四十九院は慌てて自身の胸を抑えた。
いる、雨宮を感じる、自分の魂の深いところに。
精神世界の視界に集中すれば、目の前に同じく雨宮がいたが何故か雨宮の姿が薄れている。
その代わりに彼の身体の表面を意志のある如く、大小様々な文字とも模様ともつかない金色に輝くものが無数に明滅していた。
慌てて四十九院は雨宮を引き寄せ抱きしめる。
想定してなかった状況に不安に陥り、その不安が精神世界を曇らせた。
「雨宮!雨宮!起きて!」
自分の深いところに大好きな雨宮がいて、こんなにも深く繋がっている事に初めは喜びと安心を感じていた。でも確かに彼の存在を感じるのに何かあったのか雨宮は今自分の中で危険な状態にあるようだ。一人ではどうして良いかわからない。
四十九院は立ち尽くしたまま氷のように硬直した雨宮を抱き上げてゆっくりと地面に降ろし強張った体を必死にさすった。
「雨宮、もう大丈夫だから戻って!雨宮!」
知らずにぼたぼた涙を流しながら雨宮を必死に呼ぶ。
自分のせいだ。
自分を助けるために雨宮は危険な目に遭っている。
蟻が去り、クリアな頭でいる分責任を感じた。
現実世界で手に触れる雨宮の指先を外し、スマホを置いて今度は自分からしっかりと包むように雨宮の手を握った。
同時に精神世界でも彼を抱きしめながらしっかりと手を握った。
雨宮が自分の中で死に掛けているのではと思うと怖くてたまらなかった。
もし、戻らなかったら。
自分の為なんかに死んでしまったら。
雨宮、雨宮、雨宮。
四十九院は祈るように腕の中の雨宮の額や髪にキスをした。
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