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銅色の章8
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コーヒーメーカーに父親が好んで飲んでいた銘柄の豆をセットした。当初は子供だった事もあって深煎りのそれを美味しいとは思えず、もっぱら匂いを楽しんでいたものだ。
コーヒーの香りはそのまま父親の面影と直結していて、雨宮には安らぎだった。
成長するに従い、コーヒーを飲むようになった。
初めはたっぷりの砂糖と牛乳を入れて。今はブラックだ。
何故コーヒーを飲む気になったのかというと、理由はコーヒーメーカーに残っていたレコードのおかげだった。
父親が、豆から挽いてくれる全自動のコーヒーメーカーに一目惚れして衝動買いをしてしまい、母親にこっぴどく怒られた事や初めて使った時の感動、それから様々な豆を楽しんだ時の父親の期待感が甦った。
今は自分の好みが出てきて、気に入った幾つかの豆を置いてあるが父親のお気に入りは欠かした事は無かった。
買って来ても父親が出て来て飲む訳ではないから雨宮が飲むのだが、そのタイミングは決まって迷いがあったり悩みがあって自分一人で答えを出さなければならない時だった。
無意識に父親の庇護を求めているのかもしれない。
ガリガリと豆が細く挽かれる小気味好い音 。
やがて湯が沸き少しずつ豆を濡らしてゆく。
インスタントとは違いここからが長い。
湯量を調節し もっと早く煎れる事も可能だが、本当に美味しいコーヒーを飲むなら待つべきだと父親は良く言っていた。
その言葉通りにじっくりと雨宮は待つ。
その間に、芳醇な香りが部屋に広がってゆく。
リラックス出来るし、これから味わうコーヒーが楽しみになる。
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