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銅色の章9
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気分だけは落ち着いてきたのを感じながら、それにしても、と雨宮は痺れる様に冷たい指先を包む様に揉み合わせた。
気温は先程よりもまた上昇した。
なのに自分は寒さすら感じる。
原因は、先日四十九院に潜った時にあるらしい。
深く深く潜って魂に程近い所まで行った。
その時に、自分の中の[何か]を置いて来てしまったのか、それとも魂に触れるとこういった変調が起きるものなのか。
治るものなのか、そうでないのかすら分からない。
雨宮には指導してくれる先人もいなければ、そういった事を書き残してある書物の類もない。
全て自分が体験し学ばねばならない。
雨宮の問題を解決するのは唯一時間だけだ。
やがて短い電子音が鳴って、コーヒーができた事を知らせてくれた。雨宮は立ち上がり出来立てのコーヒーを父親のマグに注いでソファに座り手の平で包み込むようにカップを持ち、その熱を指先が奪うのを感じながら熱い液体を一口啜って目を閉じた。
暖かい液体が喉から真っ直ぐ胃に落ちて行くのを感じる。
この数日、生きながら死者になってしまったのではと悪い考えも頭を掠めたが、きちんとお腹は空くし喉も渇く。食べたり飲んだりすれば味もする。
コーヒーを飲み終える頃には、初めての試みだったから体がびっくりして自律神経が乱れたのだろうと自分なりに折り合いをつけることが出来た。
多分大丈夫だ。
明日は大学へ行こうと決めて雨宮は立ち上がった。
同時に決めた。
今住んでいる部屋を引き払い、この家に戻って来よう。
ここは自分の家だ。
不要な金もかからなくなるし、時々ではなく、気が向いた日に綺麗に掃除する事も出来る。
大切な思い出が自分を苦しめた時期もあったが、もう乗り越えてもいい頃だ。
家族の思い出は何時でも鮮明に胸に蘇る。
自分にしては珍しく、生きることに対して前向きな気分だった。
それに、この間のように家族らしき存在から何らかのコンタクトがあった時メッセージも受け取りやすい気がした。
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