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銅色の章11
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やがて空がオレンジからじわじわと群青に支配され、斜陽が建物の陰に隠れてしまうとカイリの立つ場所はすっかり闇と同化し、あたりは程なく夕闇に包まれていった。
眼下では先程まで夕食を買い込む人々がせわしなく通りを行き来していたのに今はポツリポツリといったところだ。
カイリは視線を雨宮の部屋へと戻した。
雨宮の部屋の周りは、実際にはどうかわからないが、いかにも団欒といった雰囲気の暖かな光を窓辺に灯しているのに、相変わらず目的の窓には変化はない。遮光カーテンなのかもしれないと考えながらカイリはじっと観察を続けていた。
更に1時間経った。
カイリはまんじりともせずにやはり同じ場所にいた。
もう夜だ。一度定時の巡回で警備員が来たのだが、慣れた様子で少し柱の陰に隠れただけでやり過ごした。とはいえ、ここでこうして観察していられるのもあと1時間だ。店自体が終業する前に出なければならない。
スマホを取り出しちらりと時刻を確認する。
雨宮が今現在どこにいるのか、はっきりと突き止めたかったのだが、雛の事が気になりだした。
鎖に繋いだままの少年。
きっとお腹を空かせて待っているはず。
「また明日ね、ダーリン」
雨宮の部屋に向かって一度キスを送ると、カイリは踵を返し駐車場をあとにした。
カイリが去った数分後、雨宮は幸運な事にすれ違いで自宅のマンションに辿り着き、部屋へと滑り込んだ。
何日かぶりの部屋は改めて見回すと物も少なく殺風景だ。
実家に戻ると決めてしまうと、雨宮の意識の中でもうここは生活拠点ではなくなっていた。
引っ越しなんて直ぐに済むだろう。
荷物も少ないし、そもそも何の未練も思い入れも無い場所なのだから。
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