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不言色の章2
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モヤモヤする。
何か繋がりそうで、掴もうとするとまた霧散してしまうような気持ちの悪さ。
東京さん、
謎のメガネの美青年、
消えたカズ、
人を突き落とす人物、
動物を殺す犯人……。
問題が多すぎる。
どれか一つでも解決すればトントン拍子で話が見えてくるのかもしれなかったが、何一つ解決してはいない。
そうだ、せめてこの警察官に東京さんの事を話してみればどうだろう。けれどもし間違えれば、東京さんの家族…というか、主にあの可哀想な母親を悲しませることになるのか…。
そうなると、抱えたものをそこで吐き出すことは出来なかった。
そろそろ、何か新しい情報や連絡が来てるかもしれないので戻りますか、という警察官に促され神社を後にした。
そうですねと俺も戻る事にする。
途中までパトカーで送ってもらい、最寄りで降りる。
帰り道、ふと気が向いて河原に寄った。
東京さんと初めて言葉をかわした場所だ。
何となく、本当に何となくだったが、俺にしては勘が働いたらしい。10分程河原に座っていると、遠くから足音が近付いて来る。そして背後で止まった。俺は東京さんだ、と思った。
実際振り向いて東京さんだったから、変な汗をかいた。
「こんにちは!」
驚いた。
東京さんがやけに元気に挨拶してきたからだ。
それに見た目が激変していた。
女子がざわつきそうな、かっこいい奴になっていた。
1番変わったのは目つきかもしれない。
あの、ドロンとした空洞のような目が生き生きしている。
返事をかえせずにいると、東京さんが少し困った顔をして笑った。
「…一回だけお喋りしたんだけど、調子悪かった頃だからお兄さん覚えてないかも。俺、話の途中でいなくなっちゃったよね。あの時はごめんなさい。」
「…あ、いやいや。謝らなくていいよ。久しぶりだね。」
???
あれ?
何だこれ…?
好青年になってる。前はヤバイ奴そのものだったのに、どうしたっていうんだ?普通過ぎる。だって、普通に会話も成立してるし、変なことも口走らないし。
「俺、こっち来てから凄く調子良くなって。近所のおばちゃん達もみんな驚いてます。大好きな友達も出来たし、雨宮って言うんです。この街に来てよかったなぁ」
東京さんはニコニコしながら話す。
それじゃあ、と別れた時には俺の疑念は一体何だったのかと混乱し、調子が狂ってしまった。静養に来て、ばっちり効果が出たってことか?なんだそりゃ。カズの事は全く情報が無くて進展してないってのに、あまりに東京さんが平和そうで理不尽な怒りを覚える。
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