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不言色の章4
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私は多くの患者と向き合って来た。
精神科医として、カウンセラーとして、一つでも多くのデータを集める為だ。
沢山のカルテを読み、症例を読み、また宗教書も膨大な量を読み漁った。それでも人の心は計り知れない闇と同じだ。
それは自分自身についても同じ事だった。
私は患者を見ながら自分の形を的確に捉えようとしている。
意識が芽生えた頃から気付けばずっと、自分が何者か知ろうとしている。
群れの中に、必ず同程度の割合で心の不具合を持って生まれる者がいる。それは後天的なものでは無くて、そういう不具合を持ち生まれてくるのだ。脳科学者の研究によると、シリアルキラー、サイコパスなどの殺人者の脳と健常者の脳を比べてみると、共通して眼窩前頭皮質、眼窩、側頭葉の内側などに損傷があるのだ。
また、暴力遺伝子と呼ばれるMAO-A遺伝子の変異型は正規母集団に属する。この遺伝子はX染色体上にあり伴性遺伝、つまり母親から遺伝する。
女性はX染色体を父親と母親から1つずつ受け継ぐためその性質が薄まるのに対し、男性は母親からX染色体を1つだけ受け継ぐため、凶悪な殺人者は圧倒的に男性や少年が多い。
この遺伝子を持つ者は、子宮内で脳がセロトニンにさらされることでセロトニン非感受性になり、生まれた後、セロトニンが働かなくなる。セロトニンは別名幸せホルモンと呼ばれ、安らぎと平安を与え心を落ち着かせる沈静効果がある事は周知の事実だ。これが不足すると、健常者でもうつ病などに陥りやすい。
感情の欠落。特に愛情を理解する能力の欠けた者。
命の尊さを感じ得ない者。
そういった者の多くは幼い頃よりその特徴が現れる事がある。
虫や小動物を殺す。死骸や骨に興味を持つ。死そのものに興味を持つ。
四十九院明希が私の元に来た時、明らかに危険な状態だった。
母親によると、処方された薬を飲もうが飲むまいが、その病状は今まで特に変化が変なかったと言う。
彼に様々なテストとカウンセリングとを続けると、ある可能性が浮かんだ。
研究の末に生まれた、私独自の診断。
即ち、Soul。
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