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不言色の章10
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「でね、先生。今日先生に相談があってさ、俺、雨宮が好きなんだよね?雨宮は俺の好きが気の迷いっていうんだけど、これ、一目惚れってやつだと思うんだ。」
「貴方が好きだと思う心は真実なのだから、それは多分好きなのではないかしら。問題は友達としての好きなのか、恋人としての好きなのか…という所の判断だと思うわ四十九院さん。」
四十九院明希が雨宮という人物に恋をしている。
彼は短い時間で、失われた自分の人生を猛スピードで取り戻そうとしているかのようだ。しかし、相手に気の迷いと言われたのなら、四十九院明希が性急過ぎて彼の想いのスピードについていけなかった雨宮という人物がそれを窘めたか、もしくは満更でもないが照れ隠しでそう言ったか、その辺りだろう。
私は足を組み替えて、椅子の右の肘突きに上半身をもたれ掛けてリラックスした状態で話の続きを聞いた。
「恋人としての好きだと思う。だって、キスした時、あ、そうだ!アレね、先生の責任でもあるんだよ。自分の形を保つ為に支配されたくなきゃ支配しろってやつ、会ってすぐに雨宮にやっちゃったんだ。俺が消えそうで緊急事態だったし、蟻は消えてたから、形のある物は目の前の雨宮しかいなくて…」
「出会ってすぐに?…まあ、それは流石にタイミングが悪かったわね四十九院さん。もし雨宮さんに訴えられたら、私が説明して責任を持つわ。今回は相手が許してくれたようだから良かったものの、…それは犯罪よ。」
「酷いなあ、先生。…でね、キスした時、物凄く幸せになったんだよね。雨宮の全部が欲しいって気になったよ。大好きだし、一緒にいたいし、それに世界一綺麗だしさ。」
突拍子の無い展開に私は笑みを零した。
相手は相当驚いたに違いない。それでも、不審者として扱われて事件にならなかったという事は四十九院明希にとって幸いだった。
「ね、先生。男が男を好きじゃ駄目なの?おかしいのかな…?ちなみに俺は男が好きなわけじゃなくて、雨宮が好きなんだよね。困ったな…」
「あら、雨宮さんは男性なのね。では、気の迷いと言われたのはそういう事なの…。同性を愛する事は別に異常では無いわ四十九院さん。けれど、日本社会ではまだまだ同性愛は受け入れられていないだけなの。いずれ変わるでしょうけどね。貴方が雨宮さんを好きだという気持ちを捨てる事は無い。けれど、どんなに好きでも、無理やり関係を求めては駄目よ。雨宮さんの意思を無視する事になる。」
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