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助け舟
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しばらくその場に流れる沈黙。
なぜか知らないが、東雲は何も言わない。
..まぁ、助けてとは言いづらいよな。
何度か遠目から見たことがあるだけ。
何度か廊下ですれ違ったことがあるだけ。
喋ったことも無ければ、目があったこともない。
それでも何となく、助けてやるかと思えるのは、やっぱり東雲の顔がいいからだろうか。
別に俺、面食いじゃないんだどな。
はぁ、と一つため息をついてから俺は口を開く。
「奏太、一緒に帰ろうぜ」
なんか友だちっぽく見えるだろうと思ってとりあえず名前で呼んでおく。
一瞬、東雲の目が揺らいだ気がした。
そんな彼の後ろから「待った」を掛けてきたのは、言わずもがな取り巻き女子。
「ちょ、ちょっと、奏太くんは私たちと..っ」
「そ、そーよそーよ!」
俺のことを怖がってるのか、びくびくと震えながらも声を荒げてくる。
どんだけ東雲のこと好きなんだよ。
ちょっと羨ましいわ。
だが、すまんな。
今日の俺はいい奴なんだ。
「奏太、早く来いよ」
安心させる様に微笑んでちょいちょいと手招きすれば、東雲も恥ずかしそうにはにかむ。
あ、やべ。かっこいいわ。
暑さにやられた頭で一瞬そんなことを思ってしまった。
「ご、ごめん。今日は園原と帰るね」
「えー、行っちゃやだよ」
「私たちと帰ろうよぉ」
申し訳なさそうに断りを入れた東雲に、甘えた声で腕やら服やらを引っ張る女子。
俺と帰るつってんだからさっさと離せや。
俺、もう太陽に焼き殺されそうなんですけど。
早く帰りてぇんだよ!!
俺は、面倒くせぇな、と頭を掻いてから、ずかずかと東雲に近づいていく。
そのまま、纏わり付いた女子の腕を払い、東雲の腕を掴んだ。
「はやく行くぞ」
なんで俺がこんなこと...。
大股で進む俺に黙ってついてくる東雲。
女子の顔が怖くて、後ろは振り向けなかった。
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