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最後の爆弾
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例によって昇降口で俺を待つ東雲。
その周りには、やはり女子が纏わりついていた。
毎日毎日よくやるもんだと思いながらも、俺は東雲に近づく。
「奏太、帰るぞ」
声をかけた俺に気づいて、振り向いた東雲。
周りにいた女子たちも俺に気づき、ひと睨み利かせてから、東雲に笑顔を向けて帰っていった。
この一週間で随分と大人しくなったものだと思う。
そんな彼女たちを目で追ってから、俺はいつもと同じように東雲の隣へ行き、当たり前のように歩き出す。
しかし、東雲は一向にこちらを見ようとしなければ、しゃべる気配もない。
「園原、今日で最後だね」
「あ?..ああ、そうだな」
そんな帰路の途中、やっと口を開いた東雲にどこか安心した。
東雲の瞳に映る悲しい色はきっと俺の気のせいだろう。
だけど、やっぱりどこか気まずい。
そんな俺の心情も知らず、東雲はニコリと笑った。
「一週間、ありがとうね」
「別に。俺が勝手に言い出したことだし」
礼なんて言われるコトした覚えはない。
だって俺は、今日でお前との関係が切れることを喜んでるような奴だぞ。
胸の奥がツンと痛む。
「園原のおかけで楽しかったよ」
「....」
「初めて学校が楽しいって初めて思えたよ」
「....馬鹿じゃねぇの」
「友だちってものがよく分かった気がする」
「あっそ...。これから一人でうまく女子撒けんのかよ」
「それは..どうだろ。園原なしで頑張れるかなぁ」
「......」
この流れはあまり良くないんじゃないか?
淡々と流れて行く会話が妙に引っかかった。
行動の読めない東雲のことだ。
友だち期間を伸ばしてほしいとか、このままずっと友だちでいて欲しいとかそういう事を言ってくる可能性だってある。
..確かにお前のことは可哀想だと思う。
お前が俺に寄せる情を嬉しく思わないわけが無い。
だけど、俺はお前と友だちなんてゴメンだ。
同情でダチなんか、やるもんじゃないだろ。
「言っとくけど、俺はもうお前と友だちごっこなんてやらねぇよ」
「うん、分かってるよ」
「.....。ごっこじゃなくても、御免だぞ」
「うん、分かってるよ」
「...」
こっちを全然見ない東雲に、何故か俺の方がムズムズしだす。
なんか、意外と物分かりいいじゃねぇか。
安心したと、声を大にして言っても、東雲の反応は薄い。
だんだんと、こっちが心配になってきた。
「おい、東雲...」
俺が何かを言い切る前に
「俺、分かったんだ」
「ぇ」
「園原とは友だちになれないよ」
最後の日、こいつはある意味とんでもない爆弾を落としてくれたのだった。
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