アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
キスしたい
-
慌てて周りを見れば、何事かと気になっている人々が、興味ありげに俺たちを見ていた。
もう、本当最悪だ。
一気に恥ずかしくなった俺は、状況をあまり理解出来ていないらしい東雲の手をとって、人通りの少ない場所へと走る。
もう、本当、最悪すぎる。
「..っ、そのはらっ?」
しばらく走っていると、後ろから息切れした声が戸惑った音をこぼす。
気づけば裏道を走っていて、俺たち以外に人なんて一人もいない。
そろそろいいか..と安堵した俺は、足を止めて東雲の手を離した。
「園原..?いきなりどうしたの」
「はあ!?どうしたじゃねえだろ」
「え」
「あんな大通りで何言ってんだよ!絶対変な奴だって思われたぞ」
「ぁ..っ、ごめん」
やっと、さっきまでの状況に気づいた東雲は恥ずかしそうに薄っすら頬を染めてから眉を下げて俺の様子を伺ってくる。
なんか、本当犬みたいだ。
怒っていないと安心させる為に、深呼吸して気を静めながら東雲を見つめる。
じぃっと見つめ合えば、まぁだんだんと怒る気も失せて来るわけで...。
やっぱりイケメンっていうのは得だよな。
シン..とした空気になにも言えなくなって、何だか目も背けづらい。
そんな空気を断ち切ったのは東雲だった。
「でも、嘘は言ってないよ。俺は園原が好きだから」
俺の顔を見て微笑んだ否や顔を引き締めて、目をそらすことなく大真面目な顔でそんな事を言ってくる。
..なんか前にも似たようなことあったぞ。
いつも優しそうな面立ちの東雲が、急に真面目は顔をするとギャップともあって迫力が増す。
俺、こいつのこの顔弱いんだ。
「分かってる、分かってるよ」
一週間一緒にいて、東雲の気持ちは吐き気がするくらい伝わってる。
ていうか、体育館倉庫の裏のときにもう十分怖いくらい分かってんだよ。
「お前の気持ちはちゃんと分かってるよ。な?」
だから落ち着けと促せば
「..園原、キスしたい」
「は?」
文脈おかしくね?
つい、そう思ってしまうくらいに唐突な申し出を出される。
いきなり何だと身構える俺を見て、東雲が一歩ずつ近づいてきた。
「ちょ、ちょい待て。待て待て。は?」
「..キス、したい」
「しない!しないぞ、絶対しねぇぞ」
「.....」
無言の東雲が、俺の両頬をガッと掴む。
一気に粟立った全身。
冗談じゃないと必死に抵抗していると、東雲の顔が俺の目の前で止まった。
「..しないよ」
「...っ」
「キスは、しないよ」
悲しそうに眉を垂れた東雲が、スッと俺から目をそらした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
56 / 119