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本音と気遣い
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貴人にじっと見つめられると東雲はバツが悪そうに目線をそらす。
しかし、貴人はそんなもの御構い無しに口を開いた。
「王子様って理数系得意でしょ?」
「嫌いじゃないけど..」
貴人の言葉に、東雲はようやっとまともな反応を返す。
「もー、謙遜しないでよ。学年トップのくせに!」
ぷぅ、と頬を膨らませ東雲の肩を突く貴人。
...可愛くない。そんな女子みたいな仕草しても全然可愛くないからな、アホ。
しかしやられてる本人の反応は薄い。
そんな二人を見つめながらも、俺は貴人の発言に少し驚いていた。
東雲が頭いいことは知っていたけど、まさか学年トップだったとは。
本当に、どこまでも見た目胡散臭いやつだな。
「幸治ちゃんも、王子様に理数系教えてもらえばいいでしょ?」
「え」
いきなりの提案につい固まる。
しかし、考えれば悪くない話だ。
俺も貴人も理数系は弱い。
学年トップとやらの東雲に教えてもらえば、多少なりともテストが楽になりそうだ。
..だけど、提案者はあの貴人だぞ。
何か企んでいるとしか思えないし、ちゃんと勉強するのかも謎だ。
それに、やっぱり東雲はなんだかんだで貴人があまり得意ではないのかもしれないし。
...まぁ、欲を言えば東雲が教えてくれるならそれに越したことはないんだけど。
ちらっと東雲の様子を伺えば、ばっちり目が合う。
何となく逸らせず、見つめ合うこと数秒。
「俺は、勉強会してもいいよ」
俺の目を見たまま、東雲が微笑んだ。
あ、と心の中で声を出す。
もしかして俺、行きたそうな顔してたかな。
もし俺に気を使って言ったのなら、それはそれで少し複雑だ。
「おい、東雲...」
いいのか、と聞こうとして制服の裾を引っ張る。
瞬間、数秒固まったかと思えば、久しぶりに見る優しい笑顔で
「東雲じゃなくて奏太だよ、園原」
そう言った彼に何故か胸の奥がチクリと痛んだ。
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