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最終日
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それから、テスト期間はすぐにやって来た。
キーンコーン...
静かな教室に鳴り響いた鐘が終わりを告げる。
「はい、じゃあ後ろから答案集めてこいよー」
先生の言葉で、静かだった教室が一気に騒がしくなった。
出来た何だと生徒がはしゃぐ中、集められた答案を確認する先生は、作業を終え封筒の中に答案をしまう。
「じゃあ、まぁ適当に解散してくれや」
何とも適当な挨拶をすませ教室からさそくさと先生が出て行った。
それを皮切りにクラスメートたちは一斉に席を立つ。
「東雲くん!」
「東雲くん、テストできた?」
「今回も奏太くんが1位っぽいなぁ」
そそくさと俺の席に集まってくる女の子たちも変わりはなく...。
キラキラと輝く表情を見せる彼女たちを可愛いとは思うけど、彼女たちを見るたびに俺の心はどこかぽっかり穴が開く。
「1位は難しいと思うけど、俺なりに頑張れたよ」
お疲れ様と微笑めば、笑顔を返してくれる。
テスト最終日も無事に終わって、彼女たちも嬉しいんだろうか。
「じゃあ、明日ね」
そうとだけ言って、俺は席を立った。
「東雲くん?どこ行くの..?」
「園原のところだよ」
「...っ、そっか」
不安そうな顔をする彼女たちに、なんの疑問もなく答えれば、今さっきまでの笑顔が消える。
....俺、なにか不味いことでも言ったのかな。
急に不安になった俺は、どうしようかとその場を動けなくなる。
昔から俺は他人の気持ちには疎くて、そのせいか言っていいことといけないことの境目がズレてるって家族からも言われてきた。
なおそうと思っても、病気でもないコレをどうすればいいのか俺はいまだに分からない。
俺がもし彼女たちに何か不味いことを言ってしまったなら、俺はこの場合何か声を掛けるべきなんだろうか。
分からなくて、何も言わず立ち尽くしていると、俯いていた一人の女の子がばっと顔を上げた。
「...っじゃあ、また明日ね東雲くん!」
精一杯向けられたような笑顔に、俺も頬を綻ばせる。
「うん、じゃあね」
彼女の笑顔に安心した俺は、スクールバッグを手に持って教室を後にした。
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