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抵抗
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爺が部屋を出て行って数秒後、壁の一面がいきなり動き出した。
何だ何だと思っていると、その一面は上にスライドして、その向こうに新たに空間が広がる。
薄暗くてよくわからなかったが、どうやら大きな物置になっているらしい。
更にきゅるきゅると車輪が転がる音がしたかと思うと、物置の奥から爺が何かを運んできた。
部屋の中にそれを運び入れた爺が、ポケットに入れた何かを操作すると壁がまた元に戻る。
運び込まれたそれはXの形をしていて人一人が乗れそうな・・・拘束具か、成程な。
その拘束具の車輪部分を固定した爺が話し出す。
「お待たせいたしました。
まず自己紹介を致しますと、私は三番。えぇ、今思い浮かんだ三番で結構でございます。
それから私のご主人様、先ほどのお二人ですね。
恐らくお察しかと思いますが、一卵性の双子でいらっしゃいます。
主に髪質に違いがございまして、さらさらとしたストレートヘアーがいつき様、漢字は樹木の樹。
ふわふわとした髪質がはる様、こちらの漢字は季節の春でございます。
お二人とも大変仲が宜しいので、一方が居る前でもう一方の悪口を言われるのはお控えになる事をお勧めしておきます」
「爺、三番って・・・ま、いいか。それで?俺は何でここに居るんだ」
「それはお答え出来かねます」
「あ?」
「私はあくまでご主人様のご命令に従うのみでございます。
先ほどの自己紹介は私が最低限の礼儀だと判断したにすぎません。
それでは手足の拘束を一旦解きますが、暴れる様でしたら実力行使に出ますので今の様に大人しくしていてください」
「・・・分かった」
絶対ぶん殴ってやる。
俺は怒りが顔に出ないように努めて、三番が拘束を外すのを待った。
別に喧嘩得意とかじゃねーけど、こんな見るからに年寄りに負けるかっつの。
ここがどこかも分からねーけど、外に出りゃあ何とかなるだろ。
そして手足の拘束が全て外れた時、俺は有無を言わさず殴りかかった。
「おっと」
ちっ、当たったと思ったんだけどな。
俺は続けて右、左と交互に拳を出す。
だが、当たらない。かすりもしない。
当たった。と拳を出すたびに感じるのだが現実は空を切るばかり。
「恐れながら、貴方があと十人いても私には勝てません。諦めてください」
肩で息をし始めた俺とは対照的に、息一つ切らさず三番は告げる。
「ふざっ、けんなぁっ」
俺は悔しいが方法を変えた。
ドアへ向かって走る。
ドアノブに手が掛かりちらりと後ろを向くが、三番は悠然と歩いてくる。
俺は油断したなと鼻で笑いノブを引いた。
が、開かない。金具の音すらしない。
「は?何でだよ、さっきカギなんてしてなかったじゃねーかっ」
押しても引いてもびくともしないドアと格闘していると、ふと背後から声が掛かった。
「ですから、諦めてください。この館のドアは全て電子ロックで施錠されております。
そしてそのロックの開閉ができるのは私と、ご主人様のみです」
「うるせぇっ」
俺は三番に突っ込んだ。
何かの拍子に倒せるかもしれないと、一か八かの賭けに出たのだ。
しかし三番は俺の行動を読んでいたかのようにほとんど動かずにそれを避けて、俺の首筋に手刀を叩きこむ。
瞬間俺の視界は大きくブレて、ゆっくりと暗くなっていった。
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