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逃げる
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俺は本格的に逃げられる算段が立ったことに喜びを感じながら、もう一度周囲を見渡した。
・・・よし、いねぇな。
一度しか通っていない為少しおぼろげな記憶を頼りに階段を探す。
どうやら道を間違えた様で数分かかってしまったが、それでも何とか階段に辿り着いた。
階段の淵から慎重に上を見て誰も居ないことを確かめると、今度は部屋を探す。
あの部屋の場所は覚えてるぞ、確か一番端から二つ手前の部屋だな。
地下に比べるとこちらの方が多少見通しが良いので、俺は目視で見つかる可能性を避けるために少し早足で部屋へと向かった。
どうにか誰かの足音を聞くことも無く、部屋の前へと到達する。
一瞬もしかしたら三番が食器の片づけをしているのではないかと背筋が寒くなったが、それは少し強引過ぎると自分を納得させて扉を開いた。
部屋の中には幸いにも誰もおらず、俺の食事の跡もそのままになっている。
そしてその部屋からは記憶通り、庭が見える窓があった。
「よし、よしっ」
俺は思わずそう呟き小さくこぶしを握った。
だが、冷静に考えるとおかしなことが有る。
三番は、すべての部屋は電子ロックで施錠されており、その開閉は三番とあの双子にしかできないと言っていた。
しかし地下のあの部屋と、庭が見えるこの部屋。
計二か所の鍵が開いたままになっていた。
それにいくら広くて俺が注意を払ったとしても、何故誰の足音すらも聞こえないのか。
自殺を防ぐためと言って猿ぐつわまで噛ませた三番が何故拘束もせず、施錠もせず、俺を一人放りだしてどこかへ行ってしまったのか。
少し冷静になって考えれば、おかしなことだらけだった。
だが外の世界を目の当たりにした俺はそんなことを検討する余裕も無く、一目散に窓の錠を外していた。
「はっ、流石に窓は普通の鍵なんだな」
窓を開くと、かすかに潮の匂いを含んだ緩やかな風が部屋に入り込む。
俺はその空気を肺いっぱいに吸い込んで、軽く膝を曲げ伸ばしした。
こっからはもう隠れて行くより走った方が早いな・・・行くか。
俺は部屋の外へと足を踏み出す。
よく手入れされているようで、足の裏には芝生がチクチクとあたるが決して怪我をしそうなそれではない。
二、三歩進んでぐるりと見渡すと、恐らく出口と思われる門が見えた。
念のために周囲に誰も居ないか確認すると、俺は門に向かって一直線に走り出した。
「・・・はぁ、はぁ」
流石に広いな、でも、あともう少し。
時間にしては約数十秒ほどだが、最初から全力で走っていた為にかなり辛いものがある。
転ばないように細心の注意を払いながらそれでも走る。
そしてようやく青銅色の門へとたどり着いた。
ここまで来れば大丈夫だろうと振り返り今いた場所を見る。
「・・・んだよこのでかさ」
中を歩き回っている時も薄々感じていたが、目前にそびえたっていたのは予想よりも遥かに大きな建物だった。
館、いや屋敷か?どっちにしても日本で見る様なあれじゃねぇな。
・・・まさかここ日本じゃねーのか?
俺の中にかすかな焦りが生まれる。
もし誰かに助けを求めても、外国だったら状況の説明が上手くできない。
ヘルプを連呼すれば多少は何とかなる気がするが、あいつらに後から追いつかれて弁解されたら俺にはもうどうしようもない。
俺は首を振って嫌な疑念を打ち消すと、とにかくここから離れようと門を強引に乗り越えた。
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