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犬
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三日目の朝。
俺は瞼を開けるのが怖かった。
夢ではないことが分かり切っていたとしても、今日という日が始まる事が怖かった。
だが些細な抵抗は、あっけなく押さえつけられる。
「イチ様、おはようございます。朝食のお時間です」
「・・・わかった」
既に、物理的な枷はすべて外されていた。
その代わり、それよりも外すことが難しい心理的な枷を付けられたから。
俺はうつむいたまま、三番の後をついて廊下を歩く。
ふと服を着ている事に違和感を感じた。
昨日は結局裸のまま意識を飛ばしてしまったからだろうか、そういえば身体も綺麗になってい
る・・・三番か。
俺が着せられていたのは膝丈までの長いワンピースのような、一枚布の白い服だった。
サイズが合っていないのか、裾や袖口がやけに広い事が少し気になった。
そして気が付くと見覚えのある扉の前で、三番が声を掛ける。
「イチ様をお連れしました」
「はーい」
その声を聞いて体が強張る事は無かったが、その代わりに酷く吐きそうになった。
気取られると何かされるかもしれないので、少しうつむき加減で部屋へと入る。
「「おはよー」」
「おはようございます」
「結構似合ってるね、その服」
「うん、昨日も思ったけど、身体の毛が全然ないよね、体質?」
「あ・・・はい」
昨日までと敬語を使う人間が逆になっていた。
春の質問に答えた俺の答えに、更に樹が追及する。
「へぇ、全然って下の毛も無いの?」
「うん、無かったよ、つるつるだった」
俺は羞恥に顔を染めた。成人してもう何年か経つ。
だが、今言われた通り何故か毛が生えてこない。
陰部も、脇も、脛も、ひげさえも。
父親が生きていた頃相談したら体質だと言われた。
おかげで中学高校と隠し続ける羽目になり、高校最後の年にばれた時は死ぬほど恥ずかしかった。
「そうなんだ、剃る手間省けて良かった」
「だね。ねぇ樹、僕お腹すいてきちゃった」
「ごめんごめん、食べよっか」
そういえば、昨日結局朝飯しか食って無い。
「あ、イチは無しね」
「えっ」
「だって昨日、僕らが居なくなってからテーブル使ったんでしょ?」
「あ、いや、それは」
「何勝手なことしてるの?」
「・・・すいま、せんでした」
「知らない」
それだけ言うと双子は食事を始めたが俺は頭を下げ続けた・・・それしか、出来なかった。
「い、樹ぃ、ちょっとだけあげたら?僕何か可愛相になって来たよ」
「春はちょっと優しすぎるよ、このくらいしないと」
「で、でもぉ」
「・・・うーん、ちょっとってどのくらい?」
「んーと、このくらいかなぁ」
何やらテーブルの上でカチャカチャやっている。
空腹を意識したら一気に辛くなってきた、少しでもいいから、何かを口に入れたい。
「このくらいなら、良いかな」
ようやく樹のお許しが出る。
「イチ、おいで」
テーブルを迂回して、春の方へと回る。
「じゃあこれ・・・ちょっと膝付いてみて」
何かを思いついたらしい春に言われるままに膝をつく。
「そのまま手出して。・・・待て、待てだよ」
俺の手のひらの上にベーコンエッグのかけらと、ちぎったパンが置かれる。
待てと言う指示からして、まだ食べてはいけないらしい。
「そのまま、そのままね」
何がしたいんだろうか。
「春、遊んでるでしょ」
「ふふっ、そんなことないよー」
そのまま二人は食事を再開して俺は手のひらを出して膝をついたまま春の横で待ち続け、数十分後二人の食事が終わるころには、俺の膝と腕は震え出していた。
「よく頑張ったねー。はい、食べていいよ」
春から許可が下り、俺はすぐに食いついた・・・まさしく犬の様に。
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