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出て行く
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突如渡された命の重さに戸惑っているのか、双子はお互いを見るばかりで答えを出そうとしない。
・・・ちょっと煽ってやるか。
「おい三番。こいつら別にいいんじゃねぇのか?」
「・・・と、申しますと?」
三番が俺の顔を見て話に乗ってくる。
「だからよ、こいつらここに置いて、俺らだけで日本に帰っちまおうぜ。
俺はさんざんいたぶられたし、あんたもこれ以上ここで面倒見る事ねぇだろ?もし前の主人にばれたとしてもよ、どうせ代わり呼ばれて終わりだぜ多分」
「成程、一理ありますね」
俺の提案と三番の同調に、双子の顔色が変わる。
「大体こいつらだって別に他の奴でも良さそうじゃねぇか。
死にましょうかって聞かれて黙ってんだぜ?どっちでもいいんだよ。
な、そうだよな?別に俺らは死んでも良いんだよな?
お互い以外には碌に話し相手も居なくて、ずーっと二人で良いんだよな?
俺らは居なくなっても良いよな?」
双子の目が潤み始め、俺と三番の顔を凄い勢いで見比べ始める。
・・・いかん、何か楽しくなってきた。
「ほらみろ、無言は肯定だろ」
「・・・残念です。或はこれからやり直せるのでは・・・とも思ったのですが」
三番が大げさにため息をついた・・・こいつ口隠して笑ってんじゃねぇか。
だがそんなことは双子の方からは見えない訳で。
春の目からとうとう大粒の涙が零れ、樹の目も潤んでいる。
「はぁ、しょうがねぇか。
ごめんなさいの一つも言えねぇガキと一緒に居たくはねぇしな」
「かしこまりました、それでは今度来る船に便乗してそのまま出て行きましょう。ところで私本土の地理等には少し疎い所があるのですが、八代様にご案内頂いても?」
「おう、任せとけ。あーでも年寄りが好きそうな場所は分かんねぇかもなぁ」
「左様でございますか・・・家具問屋などはございませんか?」
「問屋って、あんたいつの時代の人間だよ。あーでもあったな近所に、結構輸入品とか多くてあんたの好きそうな感じのもあったかもしれねぇ」
「成程、それは是非伺ってみたいですね。あ、それから紅茶の・・・」
俺らはあえて二人の方は一切見ずに、出て行く計画を練り始める。
声だけがかすかに「ぃ、ぃつきぃ」「ぁ、ぇ、ほ、ほんとに」などと聞こえる。
そして二人が声を掛けてくるだろうと言うタイミングで、俺はそちらを向いた。
・・・かつてない程優しい笑みを浮かべて。
ほんの少しほっとした様子の二人が話し始める。
「えと、あのい」「それじゃあな。まぁ別にお前らの事は嫌いじゃ無かったよ。
散々酷ぇ事されたけど忘れてやるよ、気まぐれだとでも思っとけ。
最後にガキっぽいところも見れたしな。ははっ、まぁ仲良くやれや」
「え、ちょ、ちょっとま」「今まで大変お世話になりました。
最後の最後に礼を欠きまして、申し訳ございません。
私も、イチ様と同様お二人の事は僭越ながら、時に家族のように、大変好ましく思っておりました。どうかこれからも仲睦まじく、お幸せに」
双子の発言を容赦なく叩き潰した俺らは、そのまま背を向けて歩き出した。
・・・そして更に、俺は俺は今までの仕返しの意味も込めて、とどめを刺しに行った。
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