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前編
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『次のお便りは、……県にお住まいのラジオネーム……さんから。リクエストは……の……』
点けっぱなしのラジオから、明るい女性パーソナリティの声が漏れた。続いて、聞き覚えのある古い曲が流れ、肘を突いてベッドから起き上がる。
『……さん、おはようございます。はい、おはようございます! 私の悩みを聞いてください。おおー、お悩み。何でしょう? ……』
曲をバックにお便りを読み上げる女性の声。
それをぼうっと聞きながら、見慣れない部屋の中をそろそろと見回す。
彼らしい、きちんと整理された部屋だ。
床も、テーブルの上も……昨日脱ぎ散らかした服の他は、大体キレイに片付いてて、オレんちとは大違いだなと思う。
なんだか居心地悪い気がするのは、ノイズ混じりのラジオのせい? それともここが、オレの居場所じゃないからかな?
ベッドからそっと降りた途端、かくんとヒザが折れて、床にどすんとうずくまった。
ハッとしてベッドを振り返り、部屋の主の安らかな寝息を確かめてから、ホッと胸を撫で下ろす。そのまま静かに慎重に立ち上がると、腰から背中がズキンと痛んだ。
今、何時だろう?
ラジオに詳しい人なら、番組を聞くだけで大体の時刻って分かるんだろうか?
カーテンの隙間から漏れる明かりを頼りに、全裸のままで浴室に向かうと、スリガラスの窓の外は、もうほんのり明るかった。
夜明けだ。そういえば、ラジオでも『おはようございます』って言ってたっけ?
窓のある浴室って、なんかいいなと思うけど、今はただ、居心地が悪いだけだ。明かりを点けないまま、そっと中に入って蛇口をひねる。
勝手に借りたシャワーはオレの好みの湯温じゃなくて、冷えた肌を熱く打った。
頭から湯をかぶり、壁に手を突いて寄りかかる。
体中が痛い。
腰も背中も、ノドも痛い。剛直に貫かれ、さんざんこすられた穴も痛い。穴のふちは、もっと痛い。
でも何より心が痛い。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう?
オレはただ、ずっと彼のコトが好きで――酒の席で、それをほのめかしただけだったのに。
視線を下ろすと、昨日ヒドく掴まれた手首が目について、掴まれた痕がアザになってて、ドキッとした。
彼の苛立ちの強さを見せつけられた気がして、ぎゅっと胸の奥が軋む。
オレ、そんな悪いことしたのかな?
昨日の同窓会、彼が高校時代からモテてたって話をし始めたのは、誰だっただろう? 何人から告白されたとか、誰とも付き合わなかったとか、いつの間にかそういう話をしてたっけ。
「高井はモテモテだったよなー」
誰かから話を振られて、オレも「うん」とうなずいた。酔ってた。
「実は、オレも好きだったんだよ」
にへっと笑いながら、冗談めかしてそう言ったの覚えてる。自己満足な過去形での告白は、半分はウケを狙ったものだった。
「二谷ィ、ホモかよ」
みんなだってそう言って、ケラケラ笑ってた。高井君にも笑い飛ばして欲しかった。はっ、とでも笑って流して貰えれば、それでキッパリ諦められると思ってた。
みんなと笑い合いながら、高井君の方をちらっと見たけど、その時は彼は無反応だった。
聞こえなかったのかな? ガッカリしながらそう思ってたんだけど――。
「二谷、2人で飲み直そうぜ」
2次会の後でそう言われて、誘われるまま高井君ちに連れて来られた。それがここ、だ。
はぁーっとため息をつき、目を閉じて、じくじく痛む箇所に後ろから手を這わせる。
少し緩んだつぼみは、お湯以外のモノで濡れて、泡をこぼしてた。
恐る恐る指を沈めると、親にも触られてないトコがズキンとうずく。その指を伝うように、ぐじゅぐじゅとこぼれる彼の精液。
こんな行為、明るい電灯の下じゃ恥ずかしくてできない。
「はっ……んっ」
声を漏らしながら掻き出すたびに、昨日めいっぱい拡げられた穴がうずく。
本来は排泄のためだけの場所なのに、そこに無理矢理固くて太いモノを押し込まれたんだから、痛むのも当然だ。
血は出てないけど、どこか切れたとこあるのかな?
よく見ると、ヒザ頭にも指の痕が残ってて、強く掴まれたのを思い出した。
高井君が豹変したのは、この部屋に入ってすぐだった。
「お前、オレのこと好きだったって? どういう好きなんだ、言って見ろ」
厳しい口調で弾劾されて、ビックリして、多分うまく説明できなかったと思う。何をどう言ったのか、もうハッキリとは思い出せない。酔ってたし。
ただ、オレが喋れば喋るほど、高井君は苛立ちを強めた。
「なら、ヤろうぜ。脱げよ」
そんな風に、服を脱ぐよう促されたのを覚えてる。
「オレ、男相手なんて無理だと思ってたけどさ。お前になら勃つわ」
残酷なセリフが、オレの心を切り裂いた。
愛情のちっとも感じられないキス。一瞬触れただけで離れたキスは、ゴングのように胸に響いた。
「どうせハジメテじゃねーんだろ?」
ベッドの上で、そう言われたのを思い出す。
奪われた貞操も、砕かれた尊厳も、もう元に戻らない。初恋の甘酸っぱさも、もう――昨日の夜に書き換えられて、どんなものだったかすら思い出せそうになかった。
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