アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
恩返し
-
空が薄暗く、重い雲が広がる放課後。
翔太は久々に、颯と一緒にいた。
「雨、降りそうだね?颯………」
廊下の窓から空を見上げ、翔太は颯へ話し掛ける。
「だね……………今日、翔太と久し振りに帰れるのに、天気もたないかなぁ…………」
「…………へ……………」
帰れる………………颯に、そんな事言われたら、たまらなく嬉しい。
翔太は顔を赤らめ、颯へ視線を向けた。
「たまには、翔太とデートもいいよね?今日は大和、家の用事で早々と帰ったし…………淳は部活だし………………嫌?」
家の用事……………完全に裏家業ですが?大和は側近に呼ばれ、名残惜しそうに泣く泣く帰った。
「嫌なワケ……………」
「じゃあ、決まりね」
翔太が返事をする前に、颯は笑顔で決定を下す。
その笑顔に、翔太の心もイチコロ。
いまだに信じられない。
颯と、こうして会話が出来ている事。
学校中の、どれだけの生徒が、颯の側にいたいと思っていることか……………。
「だけど、大和…………怒らないかな?大丈夫?」
珍しく、翔太から大和の話。
さすがの颯も、少し驚いた顔をした。
つい最近まで、犬猿の仲に見えたのに…………?
「……………意外、翔太が大和を気遣うなんて」
「あ……………い、いや………その…………」
大和は先日の出来事を、颯には話していなかった。
翔太と大和、高梨の中だけで片付けていた。
多分、ごく自然に大和はそうしたのだ。
翔太の為に?
あれから翔太は、大和に会ってはいないからわからない。
でも、それが大和なんだろうと、翔太なりに感じていた。
「クス…………だけど、良かった。翔太も、大和を好きになってくれて……………皆、仲良くして欲しいから」
数少ない、颯の大切な仲間。
颯の喜ぶ顔に、翔太は役に立ててる気がして、幸せになる。
颯に救われた自分を、一生忘れない。
ほんの些細な事でも、颯の為に何かをしてあげたい。
常に、そう心に決めている。
「颯……………や、大和のどこが好き?」
「……………え…………!?」
翔太の質問に、颯は意表を突かれて、頬を赤らめる。
か、可愛い…………………!
もしかして…………颯って、大和の前ではこんな風なのかな!?
自分から振っといて、翔太は逆にドギマギした。
恋愛感情抜きにして、ヤバい気分にさせられる。
実際、実行したら大和に殺されるだろうけど…………。
「な、なに…………急に…………何で………」
「ご、ごめん…………っ。何となく、ふと思ったから…………その……………」
二人して、しどろもどろ…………。
颯の動揺する姿を、翔太はついついチラ見。
この前、大和が言っていた『諸事情』は、やっぱりコレだった。
あっという間に颯を落とすなんて、大和って本当にスゴいかも………………。
翔太は、颯に見とれながら感心した。
そんな、妙な空気に颯が笑いだす。
「ぷっ…………何だか、おかしいね。…………そうだね、大和のどこが好きなのかな?もしかしたら……………一目惚れしちゃったのかな……………」
「…………ひ、一目惚れ…………!?」
「なんてね………!………………勿論、翔太の事も大好きだよ?」
翔太の話を誤魔化すように、颯は翔太に微笑みかける。
「だ………………大好き………って………」
もう、降参です。
翔太は、心に白旗を振る。
ある意味、颯は小悪魔かもしれない。
無意識に周りを翻弄し、無意識に周りを虜にする。
颯を守るのは、至難の技。
淳や大和、はたまた海を尊敬せずにはいられない……………翔太は自分の非力さを痛感した。
「颯……………颯って、最強だね」
「最強………………?」
「………………俺も、颯が大好きって事」
皆が、颯を好きになる。
それは、友情かもしれないし、恋愛かもしれないし、ふたを開けてみないと見えては来ない。
だけど、これだけは言える。
今が、とても幸せだと言うこと。
颯を中心に、幸せは廻る。
その傍らに立てる幸せを、心に刻み、翔太は颯と腕を組んだ。
「帰ろう、颯………!俺、観たい映画があるんだ」
「映画?………………いいね、映画行こう!」
非力でもいい。
何か一つでも、楽しんで欲しい。
その笑顔を見られるのなら、例え火の中、水の中。
非力は、非力なりに頑張ります。
上を見たら、キリがない。
やれる事を、やり抜こう。
皆に助けられた、弱い自分。
皆の宝物に、返したい。
ありがとう……………その気持ちを大切に。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
25 / 451