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ジレンマ
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「お前……………神崎と、どうなってんの?」
日も傾き、辺りはすっかり暗くなってきた時刻。
全国区のサッカー部を牽引する二人が、部室の鍵を閉めていた。
二人………………そう、淳と一真の二人だ。
校内でも独特な組織である生徒会を束ね、成績もトップを競う二人は、常に切磋琢磨してきた親友。
一真は、遠慮なしにズケズケ淳に言葉を向ける。
「どうって……………別に、今までと変わらないけど」
「は?馬鹿?お前……………この前、何の為にわざわざ俺が時間作ってやったんだよ」
鍵を手にし、荷物を持ち直す淳に対して、やはりズケズケものを言う。
「いや、そんな事言われても……………俺は、なるべく颯を追い込みたくはないんだ。ただでさえ、あいつが苦しんでいるの、わかっているし……………」
そして、ズケズケ言われる事に慣れている淳も、気を悪くする訳でもなく、普通に答える。
王子様、淳にこんな口を利くのは、多分大和か一真くらい。
とにかく、『ズケズケ』が並ぶ。
そう、一真は辛口のキツい奴。
自分でも認める、『S男』だから。
「甘い!!お前、そんなんだから嵩原に神崎を持って行かれるんだろ!っとに、優し過ぎんの!たまには、ガンガン行けよっ。嵩原も、お前も、男としてはいい勝負してんだからさ」
「あのな……………颯は、大和に恋してるの。そう簡単には、いかないよ」
少しひんやりする夜風に当たりながら、二人は賑やかに?校門の方へ足を進める。
顧問の先生やコーチからも信頼されている淳達には、部室の鍵を持つ事も許されていた。
それだけ、校内での二人の位置は高かった。
「じゃあ、俺はどうなんの?」
「俺?一真が、何?」
ムスッとして自分を見てくる一真に、淳は首を傾げる。
「あー、ホラホラ……………俺が、お前を好きな事は、頭に入れてない」
「ああ………………」
「『ああ』って…………!」
一真はますます不機嫌になっていく。
何度も好きだと言って、何度も(無理矢理だが)唇を奪った関係。
それでも、淳の中は颯の事で頭が埋め尽くされている。
一方通行にもほどがある。
「マジお前ってば、無神経」
「ご…………ごめん…………一真」
大きな溜め息と共に顔を逸らす一真に、淳はバツが悪そうに謝った。
チラッと見る淳は、反省している顔も男前。
ヤバい。
余計に、いじめたくなる……………。
一真の『S』が、胸の奥でフツフツと燻っていく。
「だったら、コレで許してやる」
「…………っ……!?かず………っ……」
丁度、校内を照らす外灯の明かりが途切れた空間。
一真は淳の腕を引っ張り、驚くその顔に口づけをした。
そしてそのまま、ディープなネチネチ、キス。
「ま………やめ…………っん……んんっ…ぁっ」
「淳の舌…………超美味…………」
離れようとする淳の腰を掴み、一真はこれでもか!と舌を絡めてやる。
ドサッ………ドサドサッ……………
二人の荷物が次々に落ちていくのも、お構い無し。
垂れる唾液を舐めり取り、逃げようとする淳を追い詰める。
「好きだよ……………淳………」
「も………ぁあっ…………ん……かずっ………ま」
可愛い……………!
戸惑う淳は、相変わらず可愛いじゃねーか!
唇を重ね合わせ、一真の『S』メーターはMAX状態にまで振り切られる。
「マズイ…………ヤりたくなってきたわ………」
「え……………ちょっ…………っ」
そう言うと、一真は二人の脇に広がる芝生と木々の茂る緑のベットへ、淳を押し倒した。
バサッ…………
「ぃっ………なっ…………止めっ…一真…………!」
「無理……………お前が、反応良すぎるのが悪い」
「はぁ!?な、なに言って…………っんん!ぁっ」
焦る淳を押さえ付け、一真は上に股がると、再び激しく舌を挿入。
淳の両腕を掴み、自由を奪う。
「このまま、大人しく女になれ……………淳!」
「なるかぁ!!これ以上手ぇ出したら、絶交だからな……………!」
真顔で無茶ぶりをする一真に、さすがの淳もキレ気味に言い返す。
ちょっと目を潤ませている淳の表情が、一真の『S』に理性を注ぐ。
「う………………絶交は、嫌だな………」
一真は淳の上から身体を避けると、崩れるように淳の隣に寝転がった。
「……………ちぇ、早く俺と付き合え、淳」
仰向けに見上げた空は、すっかり満点の星。
一真の心を、嘲笑っているかのよう。
「一真とは、付き合えない。……………どんなに情けなくても、颯を諦められないから…………………馬鹿で、ごめん……………………一真」
淳は、わかっている。
冷たく、淡白に思われがちな一真の優しさを。
いつも、然り気無く支えてくれてる心遣いを。
多分、一真を好きになれたら、大切にしてくれる。
わかっているけど、気持ちは颯を求めてしまう。
颯を、好きでいたい。
「………………それでも、俺は待ってる。俺も、結局は………………馬鹿だからさ」
自分の方へ身体を向け、謝ってくる淳の愛しい事。
一真は淳の髪の毛に触れ、苦笑い。
恋は、上手くいかない事だらけ。
触れそうで、触れられない。
そんなじれったさに、胸を焦がす。
簡単に諦められたら、どんなに楽か。
このじれったさが、恋を強くする。
本気だからこそ、もがくのだ。
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