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不安
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テソプを下ろし、俺はアルバイト先の大学へ向かった。
此処では、俺の親父が教授を勤めている。
数年前、病を患い一時は死の淵をさ迷った事もあったが、今は元気に暮らしている。
「 キム先生、おはようございまーす 」
此処は何時来ても、若者の活気に溢れている。
俺は一応講師という立場だが、寧ろ俺が学生達から学ぶことの方が多い。
幾つになっても、学びは重要だ。
有り難い事に、此処は学びに満ちている。
講義の内容は、カメラの種類や様々な技法から、写真を見て、その写真の時代背景やカメラマンの気持ちを考え、意見を出し合いディスカッションする。
そんな事をしている。
講義の後は、様々な場所へ赴き、自由に写真を撮る。
俺の楽しみであり、心癒される時間だ。
頭を空っぽにして、心の赴くまま自由にシャッターを切る。
ファインダーを覗くと、世界が止まって見える。
まるで世界が自分だけのものになったような感覚に陥る。
俺は夢中でシャッターを切り続けた。
♪♪♪♪~
俺は鳴り響く着信音に気付き、携帯に出る。
「 テソプ?どうした? 」
「 今 大丈夫か? 」
「 ああ。どうした? 」
「 実は、今日うちの病院で、大学の先輩に久し振りに会ってね。今晩飲みに誘われたんだけど… 」
「 ああ。行ってくるといい。俺は構わないよ 」
俺が反対すると思ったのか、心無しかホッとしたような声色が聞こえてきた。
「 そう?そっか。ありがとう 」
「 久し振りなんだろ。積もる話もあるだろう。終わったら連絡くれればいいよ 」
テソプは、「ありがとう。じゃあ、またな」と言い、通話が切れた。
「 大学の先輩…か 」
いかんいかん。
「ただの」先輩だ。
何も起きないさ。起きる訳がない。
幾らなんでも気にし過ぎだよな。
束縛のし過ぎはテソプを窮屈にさせてしまうに違いない。
そうさ。自由にさせてやろう。
自由に…
そう頭では理解しているつもりだが、
…不安は、俺の心に暗い影を落とし、
少しずつ侵食していった…
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