アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
苦悩
-
「 あ、あの、先輩? 」
僕は何故か悲しげな先輩の表情が気懸かりで、思わずその頬にそっと手を伸ばす。
ジュニョン先輩は、僕の手をそっと掴み、指先に優しく口づけると、少し申し訳無さそうに眉を寄せて小さく呟いた。
「 ずっと…お前の事を想っていたよ
」
そして、「ごめんな」と続けて呟いた。
え。どうして 「ごめんな」?
どういう意味の 「ごめんな」?
僕に恋人がいるから?
僕に気持ちを隠していたから?
いや、違う。そうじゃない。
多分先輩は、「男の俺がお前のことを好きになってしまって」の「ごめんな」なんだ。
僕は、正直どう答えるのが正解なのか、自分の中で咄嗟過ぎて考えがまとまらずにいた。
僕が難しい顔をして黙り込んでいると、
先輩はゆっくりと身を起こして、ぼんやりと宙を眺めながら言葉を紡ぎ始めた。
「 俺は、自分が同性愛者だとか、他人と違うとか、何ていうかあまり気にしたことが無くてな。
気にしたことが無いというのは、
誰かに話す必要が無かったからで… 」
韓国という国で、自分が同性愛者であることに、違和感や罪悪感、それ以前に気に掛けたことが無かったなんて…
裏を返せば、先輩は、なんて孤独な世界に生きてきたのだろう…
ふと僕はそんな風に思えて、なんだか胸が苦しくなった。
「 …何でお前がそんな泣きそうな面してるんだ? 」
先輩は、寝転がったままの僕に視線を落として、そっと髪を撫でてくれる。
髪なんて撫でられたら…涙が溢れてきて、小さな嗚咽を洩らしてしまう…
「 テソプ… 」
先輩の優しい声。
先輩の優しい指先。
温かいその全てに、僕は応えることが出来ない。
僕には愛しい恋人がいて、
先輩は、大切な人で。
僕はどんな顔で、どんな声で、どんな言葉を先輩に伝えればいいのかわからなくて…解らなすぎて、そんな自分が情けなくて、ただただ顔を覆い隠し咽び泣くことしか出来なかった…。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 21