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ロマンス
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「 テソプ!こっちこっち 」
手招きするギョンスの元へ歩み寄ると暗室の中へ案内された。
中は本当に真っ暗で、ライトの僅かな灯りだけが点っていた。
ギョンスはまだ何も映っていない写真を、慣れた手つきで溶液に浸していく。
すると、みるみるうちに画像が浮かび上がってくる。
とても鮮明に。
「 …っ!? 」
ふと、その画像に見覚えがあった。
「 良く撮れているだろう 」
「 …いつの間に… 」
その写真は、いつの間に撮ったのか、僕が患者さんに接している横顔の写真だった。
「 お前が普段俺に見せる表情も勿論凄く好きなんだが、お前が患者や仕事と真摯に向き合う姿も大好きでね 」
「 ギョンス… 」
「 お前には自分の信じる道、信じる事を、生涯続けて欲しいと俺は心から望んでる。 何かを理由に諦めたりして欲しくない。 だから、その為に俺に出来る事は何でも協力する。約束する… 」
「 ギョンス… 」
男らしい宣言(?)に、僕は思わずポヤ~ンとしてしまう。
そんな僕に、ギョンスは不意打ちでキスをした。
「 …っ!ギョンス!! 」
「 ははは!誰も居ないから良いだろ! 」
「 む~っ!良くない!! 」
「 これ、やるよ 」
先程の写真を僕に手渡し、ギョンスは僕の手を引いて再び歩き出した。
僕は嬉しさでニヤける顔を俯いて隠しながら小走りでギョンスの後を付いて行った。
****
「 あ!キムせんせ~!!」
廊下で学生に呼び止められ、僕達はあっという間に女子学生達に囲まれていた。
「 せんせ~!お隣の素敵な方は誰ですか?? 」
「 えっ!?お医者さんなんですか!? 」
「 素敵~~!! 」
「 先生と仲良しなんですか? 」
「 デートは何処へ? 」
学生達の質問攻撃は徐々にヒートアップし始め、好奇の目と黄色い声に包まれていた。
「 おいおい、こらこら!俺の大切なハニーが困ってるじゃないか!質問は締め切り!ほら!講義に戻りなさい! 」
ギョンスの『大切なハニー』に一層黄色い声があがり、学生達のテンションはマックスに達するも、ギョンスが彼女達を一蹴し、僕達は再び静まり返った廊下を歩いていた。
大学の中央にある渡り廊下を暫く進むと、大きな扉の前に行き着いた。
「 おいで。中へ入ろう 」
ギョンスは僕の手を引いて、その大きく重い扉を開けた。
『 ギィ… 』
扉の開く音が辺りに響き渡る。
中へ進むと、白い壁、高い天井、キリスト教の教えを描いた見事なステンドグラス…そのどれもが目を見張る美しさだった。
「 此処は講堂でね。毎朝此処で学生達は祈りを捧げてから、1日が始まるんだ。 俺は常勤じゃないから、朝の祈りを此処で捧げる事は出来ないが、たまにこうして此処に来るんだ 」
僕達は並んで座り、改めてここは講堂内を見渡した。
「 此処に来ると、何て言うか…癒されるんだ。…それに…許される気がする… 」
「 ギョンス… 」
「 だから、お前を連れて来たかった。 」
ああ。
ギョンスは気付いていたんだ。
僕が今でも、時折迷い悩んでいることに。
僕がギョンスを好きになり、ギョンスの家族をバラバラにしたことに罪の意識を抱き続けていることに…
「 お前だけじゃない。俺も同じなんだ… 」
まるで心の中を見透かすように、ギョンスは僕に告げ、そっと抱き締める。
「 例え世界中を敵に回しても、俺はお前を離さない。 お前に寄り添い、苦楽を共にし、生涯守り抜くことを誓うよ 」
「 ギョンス… 」
僕は小さく『ありがとう』と呟いて、ギョンスの胸に顔を埋めた。
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