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前編
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盆
13日から15日までの三日間
先祖を迎え祀る行事
その間殺生を禁じていたが
忙しい現代ではそれも無くなり
川や海での遊泳禁止や
盆踊りなどの祭事は残る
「暑い…」
「こら佑哉!ダラダラしてんじゃないの!」
吹き出る汗を拭い
扇風機の前から動かない息子を叱る母
「ご免なさいね佑ちゃん。まさかクーラーが壊れるなんて」
12日
両親と共に父方の実家へ帰省した佑哉だったが
「何かクーラーの効きが悪…壊れとる…」
あまりの猛暑にクーラーが壊れ
夜だった為電気店も閉まっており一晩の我慢としたが
「クーラーが売り切れて盆明けにならないと新しいのが来ないって」
「えー?」
最悪の帰省となった
「ほら佑ちゃん西瓜を食べなさい冷たくて甘いよ」
祖母が西瓜を出してくれるも
「ばあちゃん、さっきも食べたじゃん」
先程からやれ西瓜やれ麦茶やれジュースと立て続けに冷たい飲み物や食べ物で
水腹となり
「じゃあアイス」
「いや腹壊すし」
「お義母さん。お客様が」
「ああはいはい」
仏参りに来た客の相手に祖母が向かうと
ため息をついた
「ばあちゃん甘やかし過ぎ」
孫の自分が言うのも何だが祖母は孫に甘い
「まあお父さんが一人っ子だから。その一人っ子のまた一人っ子だから可愛くてたまらないんでしょ」
母も笑う
「はあ…ちょっと出掛けてくる」
「いってらっしゃい!でも川や沼に近づいちゃダメよ!」
「分かってるって!」
盆の帰省の度に言われる言葉
「盆の間は川や沼に行ってはいけない。地獄の釜の蓋が開いているから」
「今時地獄って…」
苦笑したが
両親も祖父母も真剣で
笑えなくなった
「あー涼しい」
家の近くにある沼に近づき
涼を取る
「でも暑い」
家よりは涼しいが
クーラーの様な涼しさはなく
「何だよ。泳いでる奴居るじゃん」
子供や大人が泳いでいた
「皆やってるし」
佑哉も服を脱ごうとしたが
「何やってんだ!」
いきなり後ろから怒鳴られた
「え?あの…ちょこっと水浴び」
振り向くと
面を被った男が同じく面を被った子供の手を引き
佑哉を怒鳴っていた
「盆は地獄の釜の蓋が開いているんだ!そんな時に泳いじゃいけないって聞いてないのか?」
「でも!何人か泳いで…あれ?」
沼を見れば誰も居なくて
「それにここは遊泳禁止だ。死人が出ているし」
見れば遊泳禁止の立て札と共に立ち入り禁止の札も倒れていた
「もうすぐ埋め立て工事が始まるからあまり近寄るなよ。邪魔になるから」
「スイマセン…」
バツが悪そうに謝罪し
その場から離れた
「町の人かな?」
「やー!毎日暑いですね!」
「本当に!」
友人とラインをしていた佑哉の耳に入ってきた声
亡くなった父親の代わりに都会からここに引っ越してきた神社の宮司
「あ、珠喜(たまき)さん」
「よ!元気?」
老人しかいない町で唯一の若者で盆の帰省時にはよく遊んでくれた
「もしかして佑に用事があったのか?」
「ええ。もう祭事を執り行う若いのが居ないでしょう?だから佑哉を借りようと思って」
「祭事?」
「うん」
夕方
タオルで汗を拭いながら
珠喜に着いていく
「盆交じり?」
「うん。ここって盆踊りが無いだろ?」
「ジジババばっかだから踊り手が居ないと思ってた」
「ひでえな。ここは盆踊りは昔からない。だから代わりに盆には若者達が集会所に集まって村人達をもてなした」
「村人?」
「まあ成人の儀式みたいなモン?皆さん宜しくみたいな」
「へー」
「その中には仏様も居てな。だから皆面を被っていて誰が誰だか分からない。そして若者達も誰が誰と詮索してもいけない」
集会所に着くと
既に準備がしてあり
クーラーがよく効いていた
「すげ…」
冷蔵庫を開ければ飲み物と刺身
テーブルには大皿に盛られた御馳走とスナック菓子
沢山のコップに酒やタバコまで用意されており
「まあ好き勝手に飲み食いして良いから。だが酒はダメだぞ。お前まだ高校生だろ?」
「はは…」
「さっきも説明したがここで朝まで皆と食事をして適当に相手をしてくれ。ただし相手の面を取ったり誰々さん?なんて聞くな。死ぬぞ。後…飲酒喫煙は勧められても断れよ。警察関係者も居るから!これはマジで頼む!」
何故か昔ながらのタブーより飲酒喫煙のタブーの方を力強く注意する珠喜に笑う
「じゃあ朝まで頑張れ。朝になったら片付けが来るから。眠かったら寝ていて良いぞ。布団があるから」
丁寧に寝室まであるそこはテレビさえあれば民宿の様だった
「あ!大事な事を忘れてた」
珠喜が白い徳利とお猪口を持ってくる
「え?酒禁止じゃないの?」
「馬鹿。ジュースに決まってるだろ?お神酒代わりな」
珠喜が徳利の中身をお猪口に注ぎ
飲ませる
その間珠喜も紙製の面を着ける
2対の目の模様に合わせた対の三角
真ん中に大きな三角と下に4本の線
目ではなく他の部分に穴が空いており
「変」
「仕方ないだろ!手作りなんだから!変な場所に目が出来たから!俺は神の代理でこの面を着ける。他の人達は普通の面だから。お前は面は無しだ。皆に顔を覚えてもらう為だ…と!時間だ」
フラフラと外に出て来客を待つ
「大丈夫か?」
暫くすると数人の面を着けた大人が現れ
珠喜の後に着いてきた
「なあ珠ちゃん大丈夫か?さっきからフラフラしてるし」
「面の目の部分を間違えたんだろ?」
「俺が先導してやろうか?」
「大丈夫だよ!ほら!盆交じりの交人(こうじん)だ」
「ああ。田辺さんちの佑哉君」
「大きくなって!」
わらわらと群がり馴れ馴れしく話しかけてくる大人達の声に聞き覚えがあるが
佑哉はぐっと堪える
「珠ちゃん、こいつ昼間池で泳ごうとしてたぞ。注意してないのか?」
「あっ!…っと」
昼間自分を叱った大人が居たのに気付き
思わず声を出してしまう
「珠ちゃん言うな!もうガキじゃ無いんだから。てか佑~!」
拳を握りしめた珠喜に
「ゴメンゴメン。暑くてさ」
「あそこには水死した人間が仲間を作ろうとしてウヨウヨしてるんだ。気を付けろ」
ジロリと睨み
皆に向き合う
「これより盆交じりを開始します。皆さんはここで一晩を過ごします。その間決して外に出ない様に。悪霊が入らない様に施した結界が消えてしまいます」
亡霊が交じってるのに?
という突っ込みを入れたかったが
「仏と悪霊って違うのか?珠」
代わりに面を被った男が聞いてきた
「人を猫みたいに言うな!前に説明しただろ。きちんと埋葬され供養もされた者を仏。埋葬も供養もされない憤死した者が悪霊となるって。仏を羨み生者を妬む悪霊から身を守る儀式でもあると」
「ほー」
「そういう言われがあったのかー」
何故か年配の人間の声も聞こえた気がしたが
あえて無視した
「じゃあ勝手に始めろ。俺は何時もの控室にいるから」
またフラフラと歩き始めた珠喜に
一人が付き添った
「あの子は昔から不器用だからな」
「いやああ見えて最近は上手くなって」
「毎日暑いですね」
「全く!我々もですが野菜も参ってます」
面を着けている違和感を除けばごく普通の集会所での呑み会で
各々酒を呑み
冷蔵庫を漁り
好き勝手に食べていた
「ほら」
ぶっきらぼうに猪口を突きつけられ
「どうも」
徳利のジュースを注がれる
「お前はこの徳利からでないと飲めないから。好きなジュースがあったらこれに入れたら良い」
「はあ…」
珠喜の面の模様と同じ物が入った徳利の中身が空になると
佑哉は言われた通り
冷蔵庫の中を開けジュースを取り出す
「あ!いい忘れてた!佑!お前徳利」
「今聞いたー!」
「珠ちゃんそういうのって先に教えてやるもんだろ?」
「だから!」
「はいはい珠ちゃん呼びは無しな珠ちゃん」
「呼んでんじゃないか!」
仲の良さそうな二人に笑い
「佑哉君これも食べなさい」
「ほらおじさんもお酌してやるから」
「あ…ありがとうございます」
酔っぱらい達の相手をした
「今何時?」
「まだ10時」
宴会は盛り上がり
カラオケまで持ち出し
珠喜に
「何カラオケやってんだよ!近所迷惑で怒られるのは俺だぞ!」
叱られ
皆がシュンとなる
「ったく!それより薬が効いてくる頃だ。準備を」
「へ?」
珠喜の合図に皆が脱ぎだし
「ひぅっ!」
佑哉の体が熱を持ち
股間が疼いた
「盆交じりの始まりだ」
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