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隙を魅せて。30
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「本当にすまない…」
「いいですよ、それで何があったんですか」
放課後になると足早に生徒指導室へと向かった
幸い類に会わずにすみ阿久津と向き合うように座る
「っ…昼食を取った後職員室へと向かう途中、階段に女子生徒がいたんだ…」
向かい合うように座っているため阿久津の表情も伺える。いつもの優しい感じではなく真剣に聞いてくれている
「その女子生徒は、今朝…西園寺に告白していた生徒なんだが、その…」
「大丈夫ですから…」
震える指先をそっと握る阿久津にすっと力が抜ける
「朝、俺と西園寺が…その……抱き締めあってるの見たらしくて……別れろと」
「…」
「何を言っても聞いてくれなくて、どうせバレてるならと…別れないと言ったら階段から突き落とされてしまって…はは」
「…誰ですか」
「え?」
「なぜ笑ってられるんですか?その女子生徒教えて下さい」
「っ、ま、待って下さい」
こんな凶器的な目をするなんて知らなかった
阿久津の苦虫を噛んだような鋭さに背筋に寒気がしたがそれでも必死に止めた
「俺が耐えていればいいんだ、それに西園寺は慕われている。万が一の時は…」
「別れるんですか?」
「っ…それもやむを得ないと思う」
「馬鹿じゃないんですか!?」
「あ、阿久津せんせ…」
怒った姿なんて見たことない阿久津が激怒した―
ビクッと肩を震わせるとばつが悪そうに視線を逸らした
「これから何をされるかわからないんですよ?それなのに耐えるなんて…」
「けど」
「なんでも一人で解決しようとしないでいいんですよ…俺はそんな話を聞いた以上動かない訳にはいかないんです」
「…」
「頼って下さい。」
「……、麻井真生」
「え」
「その女子生徒の名前…」
名前をか細い声で呟くとしっかり聞こえていたらしい阿久津は一瞬顔を曇らせた
「分かりました、彼女には注意してみます。それとですね…」
「…はい」
「これからは一人で行動しないで下さい。最低限俺は側に居ます…でも居れないときは適当に生徒を捕まえて移動して下さい…」
「っへ…―」
「一人で居ると何をするか分からないので」
「わか、った」
「ほとぼりの冷めるまでのその期間はほぼ西園寺とは居れないと考えておいて下さいね」
「―大丈夫だ」
とは言ったが、どうするか…
俺は問題じゃない。西園寺だ。
阿久津先生は――
『―俺から上手く伝えときますので』
と、言ってたが……
ピピ…
「?」
メール…?西園寺から…
そういや、帰り見なかったからな
…緒方とケーキ、って…馬鹿なのか…緒方啓は!
「日向先生!」
「!阿久津先生」
類からのメールに飽き飽きしなが、眺めていると名前を呼ばれ振り返ると阿久津が駆けつける
「帰りましょう、送ります」
「ば、本当にそこまでは…」
「あはは、嫌ですよ」
満面の笑みで肯定付けさせられ返す言葉が見当たらず困る
この人はまったく、何を考えているのか
末恐ろしい…
「分かった…お願いします」
「はい」
「日向先生堅いですよ?」
「こうやって帰るのは新鮮だからだろ」
「いつもお一人で?」
「まぁ一緒にする人もいないからな…」
「西園寺とは帰らないんですか?」
「……っ」
1歩先を歩く心咲は類の名前が出た途端ピタッと制止する
「すいません」
心咲の反応にはっとした阿久津は追い付いて心咲に詫びをいれる
すると心咲は何も言わずに阿久津より1歩前へと足早に歩きだす
「別に阿久津先生が謝ることじゃない」
「……あ、聞いた話なんですけどね、麻井は元々西園寺と同じ学年ならしんです」
「え?」
「俺も最初は驚いたんですがね、なんでも一年間謹慎だったそうなんです」
「謹慎…?!」
阿久津の語りだした麻井真生の過去に心咲は歩くペースを下げる
「いじめがあったらしくて…悪質な」
「いじめ…」
「詳しくは分からないんですがそれで一人自殺未遂をしてるらしくて、それを促したのが麻井らしんです…やっと出てこられるようになって二年からやり直してるそうです」
「良い子には見えなかったが、そこまでするか普通」
「なので日向先生に何かあってからでは遅いので気をつけてほしんです」
「分かってる」
優しさ故に真剣な眼差しを向けてくる阿久津に柔らかく微笑んでみせた
じゃり………―
「!」
コンクリートの地面を蹴る音が聞こえバッと振り向くが人っ子一人いなかった
「どうかしたんですか?」
「今、誰かが居た気がして…」
「まさか」
「それはないだろ考えすぎだったかも!」
すぐにでも追いかけようとする阿久津の腕を掴み制止させる
「大丈夫だから!」
「っ…俺が気付いた時には追いかけますからね」
「そしたら俺一人になんだろ」
微笑して阿久津を見ると呆れたような、けれど優しさのある顔をしていた
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