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5話目
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ホテルの一室を借り、3人で入室。
「何でまひろがここにいるの?」
そう問うと、彼は俺の目を見つめる。
「聞いてたから…」
まひろは、ボソッと呟く。
「兄貴と別れた後、聞いた。21:00に駅前のこのホテルで待ち合わせって。」
「何で…」
「…今日も、勉強教えてもらいたかったから、何時に終わるか聞きたくて…。」
まひろは、申し訳なさそうにぽつりぽつり言葉を紡いだ。
「それで、俺とけんじさんの邪魔をしに?」
「それはっ……最初だけ。本当は邪魔する目的で行こうと思ってた。でも、兄貴の幸せを考えたら…行かないほうが良いって思ったんだ。
けど…本屋寄った帰り道、こいつが女と歩いてて。」
「ち、違う!あきの、聞いてくれ!違うんだ!あれは取引先の営業の子で、帰りが偶然同じで…」
「女は、茶髪でふわふわしてた。おしゃれだった。茶色のブーツ…会社には履いていかないと思う。」
確かに…。
けんじさんは、大手IT企業の副社長だ。
そう、業界でもトップクラス。
その企業と連携している会社が、おしゃれをしているとなれば、どうなのだろう…。
好感度は高いかもしれないけど…
ブーツで営業行く子を信頼できるかってきかれたら、できないって答えるかもな…。
「っ、まひろ君はだま」
「腕組んでたけど、レディファーストでも度が過ぎてる。普通、恋人がいる男が女と腕組んで歩くか?恋人だって周りに言っているもんじゃねーかよ…」
「れ、レディファーストに度などないよ。これだから高校生はまだまだ子供なんだ。」
けんじさん…。俺と2人きりの時は、絶対こんな怖い顔をしない。
こんな…怖いことを言わない。
「けんじさん、謝って。」
「あきの?何言ってるんだ。俺は君の弟に濡れ衣を着せられ…」
俺がけんじさんを力一杯睨むと、けんじさんは言葉を詰まらせた。
まひろは黙って俯いていたけど、やがて、また話し始める。
「良いんだ兄貴…俺、やっぱり子供だ。」
「やっと認めた?」
けんじさんは得意げな顔でまひろに先を促す。
「俺はまだまだ子供だ。だって…ただの取引先の女にキスはできないし、一緒にホテルも入れないからな。」
まひろの口から出たのは、衝撃的な言葉だった。
「なっ…どこまで見て……っあ…!!」
どうやら、事実らしい。
「それで、こいつはその女と婚約したらしい。婚姻届も提出済だけど、兄貴との関係は壊したくないんだって。」
そんなの…自己中だ…
「まひろ、今日は肉じゃがね。」
「え…。ん。」
俺は戸惑うまひろの腕を引き、部屋から出る。
「ま、待ってくれ、あきの!」
俺は、ピタリと足を止める。
「俺、副社長だぞ?金には困らないし、そこそこイケてるし、女も男もいけるからあきのだって寂しくないだろう?」
彼は、ペラペラと勝手に話す。
「経験だってなかなかあるぞ?だからテクニックもある。あ、そうそう。あきのの好きな料亭に行こう。あそこの海鮮丼、好きだろう?だか」
「けんじさん。
悲しくないですか?恥ずかしくないですか?」
「は?何を言ってるんだ?」
本当に
最低な男。
バシッ
小さい頃から、まひろにずっと言ってきた。
『人に手を上げて良いのは、本当に大切な時だけ。』
自然と、手を振るってしまった。
「あなたって、本当に最低。自分のことしか考えてない。俺が男だから、浮気相手でも傷付かないと思った?俺が男だから、いつでも捨てられると思った?」
「何を言ってるんだ!!」
「好きだったのに…」
「そ、それならまた元通りに」
「できるわけねーだろ?」
まひろが口を挟む。
「兄貴が今どんな気持ちか…わかんねーの?…お前のこと、好きだったんだぞ…信じてた男に裏切られたんだぞ…」
「何だい、まひろ君。ヒーロー気取りかい?やめてくれよ、高校生にもなって。俺に楯突いても…あきのは絶対君を振り向かないよ。」
「勝手なこと言わないで。俺、けんじさんとは顔見知りなだけだから。俺のこと、何も知らないくせに決めつけないで。」
けんじさん、可哀想。
この中で一番大人なのに。
考え方が幼稚園児以下。
「別れよ。2度と俺たちに近付かないで。」
今度は、まひろと並んで廊下を進む。
まひろに、助けられちゃった。
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