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第4話
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たけるは、ボールを握りやすくするために、松やにを指先につけた。そのまま、1つのボールを掴んだ。
たけるは、ランニングも、準備運動中も、ずっとそのボールに触っている。
と、いうのも俺が自主練で使わなくなったボールなんだが、なんだか愛着があるとかしょうちゃんのは俺しか触っちゃダメだとか一、二年を困らせていたので、それならお前がそのボール守っておけよと俺が提案したところ、本当に守っていやがるというわけなのだ。
「10分間のキャッチボールが終わったらポジションごとにシュート練習な。」
「はい!」
メンバーは3年11人2年19人1年12人。合計して、42人と、他校と比べても多い。
そのため、元々2面あった屋外のハンドボールコートは、4面に増え、二年と一年が他のコートに散らばった。
第1コートには三年全員と二年で選抜したやつが、ぞろっと残った。
「終了」
「はい!」
キャッチボールは難なくこなせた。
大丈夫だ、俺。少し心配し過ぎなんだ。絆創膏は誰にもバレていないし、気づくはずもない。
「次、ポジションシュートな。」
「ポジションシュートです!」
ハンドボールは、ゴールキーパー、左サイド、左45度、ポスト、センター、右45度、右サイドで1チームが構成される。
俺は、ゴールを守る役割のゴールキーパー。
ゴールを守るだけの簡単なポジションだと思われるのだが、ゴールキーパーが下手であればあるほど、チームの技術は上がらない。
コートプレーヤーが相手のゴールキーパーにビビるから得点なんて稼げたもんじゃない。
「しょうちゃんがゴールキーパーで良かった!」
「なんだ急に。気持ち悪い」
「しょうちゃん以上にゴールキーパー上手な子っていないし、しょうちゃんしかありえないし、俺のシュート止めるのはしょうちゃんしか許せないんだよね。」
「何なら、もっと上手くなれ。俺が一年の時はお前よりジャンプ力あったぞ。」
「もーっ!そんなの知ってるよ?!ゴールキーパーはチーム内で一番俊敏で柔軟性があって、とりあえずすごい子しかなれないんだから!」
「はいはい。」
と、いうことだ。まあ、俺以外、たけるの背中を守ってやれる奴はいないわけだ。
「あ、みんなストップすとっぷぅ」
たけるが、ポジションシュートを止める。
「何やってんだ、たける。邪魔だろ。」
「檜山たける、18歳。一生に一度の7mスローいきますっ!」
「毎日10本は打ってんだろが。」
「もー!釣れないなぁ!ほら、しょうちゃん準備して、あ、二年ホイッスル咥えて。」
「仕方ねぇな…一本だぞ…」
「うん!」
少し説明を入れるが、無視しても構わない。
7mスローとは、得点が明らかに可能な場面であるのに対し、相手選手の反則や妨害があった場合、また、危険な行為をされた場合に与えられるペナルティスローのことだ。
ゴールから、6m離れて半円が引かれているのだが、これをゴールエリアラインといい、このエリア内では敵味方関係なく、コートプレイヤーは侵入出来ない。ゴールキーパーだけの聖域だ。
ゴール正面の7mの距離に引かれた「7mライン」からのフリースローで、ゴールキーパーとの一対一での戦いとなる。
サッカーでの、ペナルティーキックに近いだろう。
ピーーッ!
二年のホイッスルが鳴る。
たけるの視線を追いかける。
シュッ!たけるの指と放ったボールの擦れる音が俺の耳に聞こえた。
ドッ
俺は、膝でたけるのシュートを防いだ。というのも、跳ね返すのではなく、ゴールの横にボールを避けるのだ。
「おーっ!さすが昇!」
ゴンッ
油断していた。
コートの外に追いやったと思っていたボールは、ゴールのポールに当たり、跳ね返った。
音に気付き、振り向いた瞬間、
「んあぁっ!」
ボールが俺の胸めがけて飛んできた。
俺の胸に、電気が走った。
ドサッ
俺は全身の力が抜け、その場に倒れこんだ。
「のぼるん先輩!?」
「どうしたのぼる、大丈夫か!」
「みんなどけろ!昇!大丈夫!?」
胸への強い快感に、身体の震えが治らない。
「のぼる、俺が助けてあげるからね。」
たけるは、先程と同じように俺の耳に囁き、そのまま姫抱きした。
「たける先輩、のぼる先輩は…」
「あ、俺と昇、一旦練習抜けるから。金原に仕切らせて。あと、たけるん先輩とのぼるん先輩ね?忘れちゃダメだよ?」
目をうっすら開けると、たけるが、二年の頭をくしゃくしゃと撫でていた。
たけるは、靴を脱ぐと校舎の廊下に面した窓から侵入した。
たけるは、そのまま保健室に直行した。
「コンコンッ」
たけるがノック音を口にするが、返事はない。
「失礼しま?す」
たけるは、俺をベッドにのせると、一度扉の元へ戻り、鍵を閉めて帰ってきた。
「昇…俺に何を隠してるの?」
俺の顔を覗き込んだたけるの顔は、いやらしく微笑んでいて、俺の心臓は壊れそうなほど、大きく脈打ち、警鐘を鳴らした。
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