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第7話
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次は体育の授業だ。
親が勉強をさせるために予め先生にも言ってあるが、体育は休むようにしている。
僕は教室で一人、勉強をする。
「あれっ、亮太…次体育だぞ。着替えねーの?」
「あっ、僕は…体育着、持ってきてないですし…」
というか持っていない。
「俺のスペアあっけど…でけーよな…」
「あ、いいです…その、べんきょ…するから」
「何言ってんだよ。たまには体動かすのも良いって。な?」
ニカッと笑う彼は、本当に輝いてた。
彼に言われると、流されてしまう…。
「待ってな。」
彼は笑顔のまま、僕の頭を撫でると
「京ー!」
誰かの名前を呼んで駆けて行ってしまった。
数分後、現れた彼は体育着を手にしていた。
それも、僕が着れるくらいの。
「借りてきた!着替えようぜ」
「え、でも、いいんですか?」
「いーよいーよ!あいつ今日部活休むって言ってたし!着ねーから!」
教室に押し込められ、着替えさせられる。
制服を渋々脱ぐと…
「お前…ひょろいな…」
背中を触られ、肩が飛び跳ねた。
「あ、すまん!」
「大丈夫…です。」
びっくりした…。
触られるとは思わなかった…。
着替え終わると、彼はいつの間にか教室の外にいた。
ロッカーから屋内シューズを取り出し、体育館へ向かった。
「遅れたー!」
彼は僕の肩に手を回し、
「俺のチームの新メンバー!亮太でーす!」
その瞬間、体育館全体がシーンとなった。
「あ、あの…離して…」
「何言ってんだよ、亮太。スキンシップだよ。スキンシップ!てかお前ら!お前らともチームメイトだぞ!挨拶挨拶!」
「よろしく?」
「体育初参加だろ?動ける?」
みんなが僕らの周りに集まってきた。
「あっ、……足手まといになるかもしれませんが、よろしくお願いし、ま…す」
僕が挨拶すると、
「喋れるんだ…」
「いつも俺らのこと見下してると思ってた…」
とポソポソ話し声が聞こえた。
どうしよう…馴染めるかな…
運動もできないし…迷惑じゃないかな…
「亮太!心配すんなって。俺にパス回すだけで良いぜ。」
「っ…はい……」
ピーッ
開始のホイッスルが鳴った。
目が回る程、敵も味方も激しく動く。
「亮太!」
彼の声だ。僕は咄嗟にボールを受け取った。
すぐに僕に敵がついてしまう。
「亮太!」
また、彼の声。
気付いたら、彼目掛けて、ボールを放していた。
ダンッ
ボールが床にぶつかる音。
シュッ
ボールとネットが擦れる音。
「ナイッシュー常盤!」
その声でハッとなる。
彼が得点を決めたらしい。
「亮太ナイスパスだな!見た?見た?俺のシュート!今日はお前が見てるからカッコつけちゃったぜ!」
彼は僕に抱きついてきた。
ふわっと汗の匂いがした。
「あ、すみませ…見てませんでした…」
「えー!じゃあ次もスリー決めてやるよ!」
その言葉通り、彼は得点を重ねた。
あっという間に18点だ。
「亮太もシュートしてみろよ」
彼は笑顔でパスしてきた。
できるわけない。こわい。
彼の顔を見つめ返すと、ニカッと笑った。
僕はぎゅっと目を瞑り、ボールを宙に放った。
シュッ
彼のシュートと同じ音がした。
ビーッ
10分タイマーのブザーが響いた。
得点は20点。
「ナイッシュー亮太!!」
彼がガバッと僕に覆い被さった。
バランスを崩すが、彼が腰に手を回し、抱きとめてくれた。
「すまんすまん!勢い余った…」
彼の背後から、チームメイトが来た。
また、彼と僕を離そうとするんだろう…。
「すごいな、吾妻…初めてには思えねーよ…」
チームの一人が僕に笑ってくれた。
「ナイスパスだし、ナイッシューだし…鳥肌やばかったわ!」
みんなが、褒めてくれた。認めてくれた。
すごく、嬉しかった。
「ありがとうございましたっ」
僕は、その日…初めて学校で笑った。
「お前、笑えるんだな」
彼は僕をまじまじと見つめた。
「ぼ、僕だって人間ですっ」
ムッとなって言い返すと、
「ムキになってかっわいいなぁ!お前!」
「か、かわいくなんて、ないですよ…」
「いちゃいちゃすんなよ、お前ら」
い、いちゃいちゃ!?
「すまん安藤。でも亮太かわいいんだよ!」
「や!やめてください!」
「照れた照れた!」
体育は、小学生までしか、受けたことがない。
すごく久しぶりだったけど…
彼のおかげで、とっても楽しかった。
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