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第9話
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僕は、姉からまたもらってしまった制汗剤を見つめている。
今日は風が吹いていなくて暑苦しい。
外からは蝉の鳴き声も聞こえてくる。
更に午後二時を過ぎたあたりから気温が徐々に上がってきた。
少し…汗臭いかな…。
一枚だけ、使ってみよう。
人生初の制汗剤だ。
今日も昨日みたいに、普通の子と同じように。
彼と、同じように。
「す…涼しい…」
首に当てるだけでひんやりとして涼しく感じた。
「良い匂いもする…」
シトラスの匂いだ。
匂いだけでも爽やかさがある。
「亮太ー!」
彼の呼ぶ声が聞こえ、
「へっ?」
ガバッと後ろから抱きつかれた。
「え、え?」
今の僕と同じ匂い。
彼だ。
「部活終わった!頑張ったぜ!」
「お、お疲れ様…」
「もうヘトヘト〜…体育館暑過ぎるし…」
彼はワイシャツの胸元をパタパタと扇ぐ。
それだけで僕と同じ匂いが漂う。
「熱中症には気をつけてくださいね?」
「はーい!」
「あ、昨日借りた体育着…僕の代わりにお友達に返して頂けますか?」
「ああ、いいぜ!」
「ありがとうございました、と伝えてください。」
「律儀だな、亮太は。」
ワシャワシャと髪の毛を混ぜられる。
「くすぐったいですよ」
「なあ、亮太。」
「はい?」
「敬語、やめねえ?」
「え…?」
「いや、初めて喋った時より親しくなれたっつか、もっと親しくなりたいっつーか…その…」
彼は、ワタワタと慌てて言葉を探す。
僕はもちろん頷いた。
「いいよ。」
「本当か!?俺のこと学武って呼んでくれてもいいんだぜ!」
「わかった。これからもよろしくね、学武。」
彼が、嬉しそうに笑った後、ふわりとシトラスの匂いに包まれた。
「嬉しい、亮太。俺、超嬉しい!」
僕はその時、確信した。
僕は彼に惚れているということを。
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