アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
優越感の理由。
-
「……?」
「……いや、……あいつがああやって……人とコミュニケーション取ってるのが……ちょっと意外だなぁと思って…」
なんて言っていいのかわからず「…いや、だって俺の事も総スルーしてくるくらいですからね、?」と付け加えると、
「……あぁ、…」
と、酒井さんが眉を下げて小さく笑った。
その顔が心なしかやたら悲しげに見える。
そして、「……残念ながらミヤくんのはコミュニケーションじゃないから、…」と儚げに笑った
……コミュニケーション…じゃない……、
「ミヤくんは確かになんでも教えてくれるし、頼めば添削もしてくれる。……でも、それはコミュニケーションじゃないでしょう?、…逢坂くん、もう一回よく見てみて。」
酒井さんはそういうと、くいっと都の方に視線を送った。
その言葉の通りもう一度視線を送る。
そこにはさっきの通りまだ何かを教えている都がいて、教えている人物はさっきの学生とは違う女学生だった。
そして相変わらず都は手だけを動かし何かを描き、その二人からはなにも音が聞こえない。都の表情は依然と無表情のままだ。
「……、ミヤくんは本当に教えてくれる"だけ"なんだ。…ああやって学生が質問する、それにミヤくんが筆記で答える。…会話のキャッチボールはそれでおしまい。……残念ながら、それは会話でもコミュニケーションでもない、ただの一方通行な言葉の流れさ。」
少し笑いながら酒井さんはそういってまた眉を落とす。
"一方通行な言葉の流れ"
俺の中でなぜかその言葉だけが頭にのこった。
、昔、立川さんに「お前の写真は言葉そのものだ」と言われた事があった。……でも、それと同時に「写真は言葉に比べて一方通行だ」とも。
その事は常に俺の中ではわかりきっていて、今の俺を作り上げる言い訳となっていたのだ。
……でも、それと同時にこのままではいけないという漠然的な不安と恐怖もあって、そしてそれがついに限界まで来ている。
自分の中でその事にじわじわ気づかぬふりをしていて、…それが、今良い写真を撮れない理由になってるのだ。
……多分、都に今の俺の写真を見せてもなんも感じてくれないだろう。
……むしろ、嫌われるかも知れない、。
……だって、今の俺が撮る写真のままでは酒井さんのいう"一方通行な言葉の流れ"そのものだから。
……つーか、階段からこける写真撮ってる時点で嫌われてるのかもしんねぇけど……、。笑
「……、あいつ、あんなんで平気なんスか…?」
つい漠然と思っていた事が口から出る。
そんな俺に酒井さんが「…ん?、平気って、、?」と笑いながら答えてくれた。
……これは、俺が都を見てて常に思っていた事だった。
あいつと初めて会ってまだ数週間しか経ってねえけど、本当に驚くほど誰かと話していたり、また笑っていたりする所を一度も見かけた事がない。
この前保健室で手当てした時は岡部さんとかいうお手伝いさんに抱えられていたけどその時でさえ一言も交わしていなかったのだ。
そんな住み込みでお手伝いしてる顔馴染みの人にさえその対応なのだから、きっと友達もいないだろうし、ましてや彼女だって絶対いない。
…俺が言うのもなんだけど、都は完璧に社会不適合者だ。
むしろ下手に精神病院とかにでも連れてったらたくさん肩書きをつけられてしまうような人間だ。
……だって俺は人と接する時くらいはちゃんとしてるもん。
苦手な"言葉"というものもちゃんと使って、。
でも今ならはっきりわかる、俺と都は似た者同士だ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
49 / 130