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神保町と都。
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ーーーーーー
「、それじゃあ代金は5000円ね、」
さっきよりも打ち解けたのか、おばちゃんが店の奥の方へ行き、いつも通りのダミ声でそういった。
おばちゃんに付いて俺たちも奥の方へと向かうと、都はその声を聞くや否や、目の前のカウンターへと腕に抱え込んでいたたくさんの本達をドスンと下ろした。
おばちゃんはいつも通り古いこれまた埃まみれの本がたくさん積まれたそのカウンターの向こう側へと入ると、なにやらマグリットの絵が描かれた缶箱を開ける。
やる気のない古書店にちゃんとしたレジなんてあるわけがない、。その缶箱こそがここのレジ役で、中にはクシャックシャに折れた1000円冊とジャラ銭が粗雑に入っていた。
そんなおばちゃんをよそに、横にいる都は持っていたバッグから財布を取り出すと、ゆっくり1000円冊を数えて、ちょうど5枚、本の上へと出しておばちゃんに軽く会釈をした。
……ここの本屋にきてから多分2時間くらい経っただろうか、……。時計とかねえから正確なことは一切わかんねえけど、玄関のガラス戸から見える外の街が赤く染まりかけてるから結構な時間本を見ていたのだということがわかる。
さっき咄嗟に出てしまった言葉に罪悪感と自責とそれから言葉への苦手意識はずっと拭えなかったけど、やっぱりそれでもすきな本達があるとテンションは自然と上がった。
しかも、初めてここに人を連れてきて、しかもユリウス好きの奴と。
都にドヤ顔でユリウスの本達を見せたら、案の定都は大袈裟なリアクションは取らないものの、無言ながらも目を精一杯キラキラさせてずっとユリウスに食らいついていた。
なおかつここの店はコアな品揃えなだけあって、都のすきな本とか気になる本もすごいあったらしく、……結構な数の本を迷いなく買っていた。
「…お前、金あったの?」
そんな躊躇なく5000円を出した都にそっとそう聞くと、
都は一度チラッとこちらを見て次に自分の財布へと目線を落とす。
その目線につられて俺も都の財布の中を見るが、そこには何も入っておらず、あ……ぎりぎり足りたって事か、……と理解した。
急に来た古本屋で5000円って結構な買い物だと思う。だって古本屋なんて、安いのだったら普通に100円とかで買えるし、……まぁ、ピンキリだけど……。でも、
目の前の本の山に目を向ける。
19.……20、21……
何冊買ったのかは定かではないけどかなりかってて、……多分これで5000円ってかなりおばちゃんが値引いてくれたんだなって予想がついた。
もちろん貴重な本だってあったと思うし、……
「、持ち帰りは段ボールでいいかい?」
おばちゃんは都に向かってそういうが多分そう聞きながらもすでに段ボールに本を移し始めていたから、返答を聞く気はなかったのだろう……
……でも、本を段ボールに入れてくれるってシステムは本当にありがたいと思う。
俺もいつも段ボールに入れてもらうけど、……帰るときに抱えるあの段ボールの重さってすごく幸福感を覚える。たくさん本を買ったっていう充実感、それと空き段ボールにかかれた"三ケ日みかん"の文字もとても風情があって好きだ。
「……っ、」
「ーー…っと、。……なんかお前危なっかしいなー……。ちゃんと持てっかあ〜?」
カウンターの上からその段ボールを抱えた都が明らかに重そうな表情をするからそういうも、
「……っ」
都は相変わらず無視で、そのまま店の入り口の方へとゆらゆらよろけながら行ってしまった。
……はぁ……全く、……
「……おばちゃん、ありがとね、色々。」
そんな都の様子に少しため息をつきながらカウンターのおばちゃんに声をかけた。
「………、あいつああ見えてもすげぇ喜んでたよ、多分。……あれでもいつもよりよく反応する方だと思うし……」
俺もよくあいつのこと知らないからなんとも言えないけど、……大好きな本達に囲まれてたからなのか今まで見たことないような嬉しそうな顔とか色々してた……すっげぇわかりずらかったけど、…。
(もちろんたくさん写真を撮った)
すると、
「………………あの子、……アンタに似てるね」
おばちゃんが都を遠目で見ながら静かにそういった。
「…………へ、?」
思わずそんなおばちゃんの意外な言葉に変な声がでる。
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