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生花と死花。
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研究室を飛び出してポツンポツンと明かりが灯る薄暗い廊下を見渡すと、研究棟の裏口の方に微かに都の姿を見つけた。
…………外、……?
と思いながらも俺はその姿を追って、都が出て行った裏口の扉を俺も勢いよく開ける。
外は見渡す限りの黒い闇で、この中で都を見つけ出すのって、……
と少し途方に暮れたのだが、目の前の別の棟の脇にある花壇に、壁に設置された誘蛾灯の青い光に照らされた都が、まるで浮かび上がるように蹲っていた。
俺はなにも考えずにゆっくりそこに駆け寄る。
夏の虫の声が黒い夜に響き、真上にある誘蛾灯に蛾がバチバチと当たって控えめに音を立てる。
都に当たるその青い光が、その都度小さな影となって揺れた。
「………………」
「………………っ、…っ、、」
後ろから見てる分では都がなにをしているかさっぱりよくわからなかったのだが、
回り込むように横から都を見ると、
さっき俺があげたダリアの花が近くの地面に無残に散らばっていて、都はその折れそうな指で花壇の隅の土を必死に掘っていた。
"…………っお前、何してんの、…?"
その言葉が喉を通って口から出そうになった。
でも、今の都にはなにも話しかけられないようなそんな必死なオーラがあった。
青く照らされた指がいつもより青白くぼんやりと浮かび、まるで骸骨のようにみえる。
そんな指が必死に土をかき、そしてもう一つの手で地面から一輪のダリアを取ると、その掘った穴に優しく埋めて周りの土をかける。
………………っ、……あ、…………
その瞬間に都がなにをしたいのか一瞬でわかった。
都は一本の花を植えるとその今までの工程をもう一度繰り返す。
、……ああ、……
……都は、……切花は嫌いなんだ、。
……都の好きな植物との違い、…それは生きてるか生きてないかだ、。
研究室にたくさんある都の育てている観葉植物や、この前のクレマチスは、しっかりと土に根を張り、水をあげ忘れない限り生き続ける。
それに種を残せばまた植えて、永遠に命が続いていくだろう。
……でも、さっきの俺があげたダリアのような根を切り落とされた切花は、花瓶に生けたとしてどんなに生き生きとうつくしくても、それはみるみるうちに枯れていく数日の命だ。
…………仮にそれをもう一度植え直したとしても、…………
俺はもう一度目の前の都に目線を向ける。
都はさっきのように必死にダリアを植える。
……そんな都の表情は悲しみや淋しさが溢れ今にも泣きそうだった。
………………あぁ、……俺は何て事をしたのだろう、……。
都がなぜこれだけ過剰に"死"というワードに反応を示すのか全く分からない。
もしかするとそれが都のこの不思議な儚さや切なさを形成しているものの鍵となるかもしれない。
もしかするとそれが都の踏んではいけない地雷なのかもしれない、……
それなのに俺はなにも考えずただ都が喜ぶことしか想像してなかった、。
、…………そんな俺の浅はかな考えが、結果、都を苦しめることになっているのだ。
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